校門の前まで来ると、さっきまでの騒ぎがまだ耳の奥で鳴っていた。章吾は一歩だけ先へ出てから、背後を振り返らないように肩を強ばらせる。早くこの場を離れたい。その気持ちだけが、夕暮れの空気よりもはっきりしていた。 「おい、待てよ章吾!」 優斗の声が飛んできて、章吾は思わず足を止めた。だが止まったのは一瞬で、次の瞬間にはまた早足になる。追いかけてくる足音が三つ、ばらばらに重なった。振り切れそうで振り切れない距離が、余計に神経を削る。 「待てって。まだ話終わってないだろ」 「終わってないのはそっちだろ!」 振り向きざまに返すと、自分でも驚くほど声が強く響いた。一颯が苦笑し、晴希は息を切らしながらも目だけは好奇心で輝かせている。優斗は真剣なのか面白がっているのか分からない顔で、なおも食い下がった。 「だって、急に戻るとか普通ありえないだろ。絶対まだ何かあるって」 「何かあるって決めつけるな」 章吾は言い返したが、胸の奥は落ち着かないままだった。あの装置、記録、教師の気配、そして突然の変化。ひとつひとつはつながっているはずなのに、まだ形にならない。戻れたことさえ、終わりではなく合図みたいに思えてしまう。 校門脇の街路樹が風に揺れ、細い影が地面をなぞった。章吾はその影を見て、ふと妙な予感に足を鈍らせる。今日はもう悪夢で片づく話じゃない。そう思った途端、背中が薄く冷えた。 「章吾、ほんとに隠してない?」 晴希の問いに、章吾はすぐ答えられなかった。隠しているかどうかではなく、まだ自分でも分からないことが多すぎる。言葉を探す間にも、三人の視線が集まる。 そのとき、遠くで校内放送の終了を告げる短い音がかすかに流れた。章吾はその音を聞きながら、ここで立ち止まればまた囲まれると悟る。逃げるように離れるのではなく、次の面倒へ向かうしかない。 「……とにかく、今は帰る」 絞り出した声に、三人はまだ納得していない顔をした。けれど章吾はもう振り返らなかった。背後で続く問いかけを振り切るように、校門の外へ足を向ける。夕闇はすぐそこまで来ている。だが章吾の胸には、ただの一日では終わらないという確かな予感だけが、静かに残っていた。
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朝起きると、黒髪ロングのスレンダーな美少女の姿になっていた主人公が、体の変化に戸惑いながらも登校し、友人たちの過剰な好奇心に振り回される。放課後には、体育倉庫での騒動をきっかけに、友情と距離感が大きく揺れる。最後は元の男子の姿に戻るが、まだ油断できない余韻を残すコメディとして再構成する。
