校庭の土は夕方の光を受けて、昼間よりずっと赤く見えた。さっきまで倉庫の中にいたはずなのに、外へ出た途端、空気がやけに広い。章吾は思わず肩をすくめ、足元の感覚を確かめた。熱っぽかった体の違和感が、風にほどけるみたいに薄れていく。胸の奥で何かが静かに切り替わり、次の瞬間には、見慣れた重みが戻っていた。 「……戻った」 掠れた声は低く、章吾自身のものだった。黒髪が頬をかすめる感触も、さっきまでとは違っていた。指先を握ったり開いたりして確かめる。確かに、男の体だ。あまりに唐突で、膝が少し震える。それでも、ようやく息ができた気がした。 「章吾、今の、」 優斗の声が裏返る。目を丸くしたまま、三人とも言葉を失っていた。安堵の色はあるのに、興奮のほうが明らかに勝っている。晴希は一歩前へ出かけては止まり、一颯は腕を組んだまま眉をひそめた。 「本当に戻ったのか」 「見れば分かるだろ」 章吾が言い返すと、優斗がほっとしたように笑いかけた。だが、その笑いはすぐに別の熱を帯びる。 「で、なんで急に戻ったんだよ」 「さっきの装置、何した?」 「最初から分かってたこと、まだあるだろ」 次々に詰め寄られ、章吾は一歩下がった。安堵したはずの空気は、あっという間に好奇心に塗り替えられる。三人は章吾を中心に円を作るように囲み、逃がす気配がない。嬉しいのか、疑っているのか、その境目が曖昧で、だからこそ余計に息苦しかった。 「落ち着けって。俺だって、何が起きたのか全部わかってるわけじゃない」 そう返しても、優斗はなおも身を乗り出す。晴希は目を輝かせたまま、いっそ答えを引きずり出すつもりでいる。一颯だけは少し冷静そうに見えたが、その視線は章吾の顔から一度も外れなかった。 章吾は唇を結ぶ。戻れたことは、確かに救いだった。けれど、完全に安心できる状況ではない。視線の圧に、また心臓が早くなる。校庭を抜ける風が、乱れた髪を揺らした。 「だから、今は――」 言いかけたところで、三人の問いが重なった。章吾は思わず口を閉ざし、夕暮れの空を見上げる。まだ終わっていない。むしろ、ここから先のほうが厄介なのかもしれなかった。
朝になったら美少女
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