エラベノベル堂

謝罪出張、ふたり部屋

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10章 / 全10

朝の光がカーテンの隙間から差し込む中、二人は身支度を整えてホテルを出た。遥の体は鉛のように重く、内腿の筋肉が歩くたびに痛んだ。昨夜の記憶がフラッシュバックしては、顔が熱くなる。 「課長、タクシー呼びます」 「ああ、頼む」 正明も疲れているはずだが、表情には出さない。二人は無言でタクシーに乗り込み、謝罪先の会社へ向かった。車窓を流れる街並みは、祭りの翌日らしい静けさに包まれていた。遥はスマホを握りしめながら、これからの謝罪の言葉を頭の中で反芻する。 「緊張すんなよ。俺がついてる」 正明が低い声で言った。その言葉に含まれる別の意味に気づき、遥は顔を伏せた。 「……はい」 タクシーが目的地の前に停車した。ビジネス街の一角にあるオフィスビル。遥は深呼吸をして、正明と共にエレベーターに乗り込んだ。ロビーの受付で名刺を差し出すと、女性スタッフが困ったような表情を浮かべた。 「おはようございます。〇〇株式会社の者ですが、田中様にお目にかかりたいのですが」 「あの、実は担当の田中は今日休暇を取っておりまして」 「休暇?」 遥は眉を寄せた。 「はい。昨夜遅くにメールを送らせていただきました。問題ないというご連絡だったのですが…」 「……は?」 正明が間の抜けた声を上げた。 遥は呆然とした。昨夜、ホテルに着く前にもスマホを確認したはずだ。いや、その後は……正明に邪魔されて、チェックする暇がなかった。 「……昨夜の、何時頃ですか」 「午後七時頃かと」 遥は膝が崩れそうになるのを堪えた。新幹線に乗る前には届いていたかもしれない連絡だ。確認しなかった自分の不手際。そして、それ以上に、無駄な出張だったという事実。 「冗談だろ……」 正明が低く呻いた。 「申し訳ありません」 女性スタッフが頭を下げる。 「いや、お気になさらないでください」 遥は引きつった笑みを浮かべた。怒る気力さえ残っていない。ただ、徒労感が胸を満たしていく。 「戻りましょう、課長」 二人は並んでビルを出た。朝の空気は澄んでいて、昨夜の熱気は嘘のようだ。 「なあ」 正明が小声で囁いた。 「次は俺の家で『出張』どうだ?」 遥は足を止め、彼を振り返った。ニヤニヤとした顔。この状況で、よくそんなことが言えると思う。 「いやです」 即座に返したが、その声には以前のような嫌悪感は含まれていなかった。むしろ、呆れと、どこか甘い響きが混じっている。 「冷たいな。昨夜はあんなに熱くなってたくせに」 「……課長」 遥はため息をついた。 「もう忘れてください」 「忘れられるわけないだろ。お前のあの顔」 「課長!」 遥は顔を赤くして声を荒げた。正明は楽しそうに笑っている。 「まあ、いいさ。またミスしてくれれば、出張の必要がある」 「しません!」 遥はきっぱりと言い放った。けれど、その心の奥底で、小さな予感が芽生えているのを否定できなかった。この奇妙な共犯関係は、これで終わるのか、それとも。 「帰ろうぜ。新幹線、取らねえとな」 正明が歩き出す。遥はその背中を見つめながら、小さく息を吐いた。 「……本当に、最低です」 呟いた言葉は、朝の風に攫われて消えた。

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OLの若妻が仕事のミスで上司と地方出張へ。宿不足でラブホテルに泊まることに。上司の愚痴を聞くうちに雰囲気になり、体の関係を持ってしまう。夫との電話中に興奮が高まり、朝まで情事に溺れるコメディ。

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