エラベノベル堂

謝罪出張、ふたり部屋

18+ NSFW

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第2章 / 全10章

新幹線の座席に揺られながら、遥は窓の外を流れる景色を眺めていた。夕暮れが近づき、空は茜色から薄紫色へと変わっている。 「あの店、三ヶ月前から予約してたんだぞ」 隣の席から正明の声が届く。同じ愚痴を、もう何度聞いただろう。 「はい、存じております」 「わかってるじゃなくて、共感しろよ。あの店は予約困難でな。何か月も前から電話して……」 遥は適当に相槌を打ちながら、スマホの画面を見つめていた。夫からのLINEが入っている。『今日は何時に帰れる?』というメッセージに、まだ返信できていない。 「……で、次の予約ができるのはいつになるか……」 「課長、もう現地に着きます」 「わかってるよ。お前な、人の話を聞け」 新幹線が減速し、静かにホームへと滑り込んだ。二人は座席を立つ。駅前は予想以上に混雑していた。観光客らしき人々が提灯や法被姿で歩き回っている。 「なんだ、今日は何かあるのか?」 「祭りみたいですね」 遥が看板を見上げると、『第35回 夏祭り』の文字があった。 「……嫌な予感がするな」 正明の予感は的中した。駅前のビジネスホテルに始まり、徒歩圏内の宿泊施設を次々と当たったが、どこも 「満室」 の札がかかっている。 「すみません、今日は祭りでして……」 フロントの女性が申し訳なさそうに断る。 「他に当たってみます」 と遥が言い、次の宿へ向かう。雨が降り始めていた。小雨だが、二人とも傘を持っていない。遥のスーツの肩が濡れていく。 「おい、あそこ」 正明が指差した先に、派手な看板が見えた。ピンク色のネオンがちらついている。『エンジェル・ネスト』という文字が読み取れた。 「……課長」 「他に空いてる宿があるなら言ってくれ」 遥は言葉に詰まった。確かに、他に選択肢はない。 「わかりました……でも」 「緊急事態だ。仕事だからな」 正明は憮然とした顔で歩き出した。遥もその後を追う。ラブホテルの自動ドアが開くと、甘い香りが漂ってきた。ロビーには誰もいない。セルフチェックインの機械が光っている。 「……課長、私、ここで待ってます」 「馬鹿言え。一人で外にいる気か。雨が強くなってるぞ」 正明は遥の腕を掴んで、中へと引いた。 「仕事で泊まるんだ。気にするな」 「……はい」 遥は俯いたまま、ロビーの一画にあるソファへ座った。顔が熱い。夫にどう説明すればいいのか、まったく思いつかなかった。

第2章 / 全10章

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