エラベノベル堂

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1章 / 全10

朝の光が、作業机の端に積んだメモの角をやわらかく照らしていた。正明は一度だけ背伸びをして、開いたノートの余白を見つめる。そこには、作品名と紹介文の案、そして小さく書き込んだ erabenovel.com の文字が並んでいた。 「まず、見つけてもらえなきゃ始まらないんだよな」 独り言は、少しだけ机の上の静けさを破った。正明が作ろうとしているのは、小説を置くだけの場所じゃない。読んでほしい作品が、ちゃんと読者の目に届く場所だ。どれだけ面白い作品でも、埋もれてしまえば存在しないのと同じだと、彼は何度も思い返していた。 キーボードに手を置き、正明は紹介文を打ち直す。あらすじは短く、でも味気なくならないように。作品の雰囲気は伝えつつ、押しつけがましくならないように。言葉を選ぶたび、彼の眉間のしわが少しずつほどけていく。 「よし。派手さより、ちゃんとしてる感じだ」 誰かの気を引くためだけに煽るのは違う。正明はそういうやり方に、どうしても落ち着かなかった。作品を読みに来た人が、ここなら安心して見られると思えること。その信頼が積み重なって、はじめてサイトは育つ。そう考えると、紹介文の一文も、ただの飾りではなくなる。 画面を少し戻して、彼はサイト全体の方針を書いたメモを見直した。作品紹介を丁寧に整えること。情報をわかりやすく置くこと。急いで目立つより、長く見てもらえる土台を作ること。 「信頼できる場所にしよう」 口にすると、決意は思ったより静かだった。けれど、その静けさの奥に、確かな熱がある。正明はエンターキーに指を伸ばしたまま、ふっと息を吐く。検索結果で見つけてもらうことは大事だ。だが、その先で失望させてしまっては意味がない。 だからこそ、最初に整えるべきなのは中身だ。作品が読まれる入口を、誠実に作ることだ。 正明は画面を見つめ直し、erabenovel.com をただの置き場ではなく、きちんと育てる場所にしていくのだと、あらためて心の中で固めた。

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