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2章 / 全10

夕方の色が窓の外に滲みはじめるころ、正明は椅子に深く座り直した。小さな書斎の空気は、昼の熱を少しだけ残したまま静かに沈んでいる。目の前の画面には、erabenovel.com のトップページが開かれていた。 「うーん、まだ少し分かりにくいか」 正明はマウスを動かし、見出しの文を打ち直した。作品を置いていることは伝わる。だが、初めて来た人がどこを見ればいいのか、どの順で読めばいいのか、その道筋がぼんやりしていた。彼は紹介文の一行を削り、代わりに入口になる言葉を足す。 「読みに来た人が迷ったら、その時点で離れちゃうんだよな」 声に出してみると、答えは意外なほど簡単だった。目を引く飾りより、先に必要なのは、足を止めた人が次へ進める手がかりだ。トップページは看板ではなく、案内図でもある。正明はそのことを、いまさらながら思い知らされた。 さらに下へスクロールし、作品紹介の並びを見直す。似たような説明が続いていないか、読み始める前に不安にさせる文言はないか、ひとつずつ確かめていく。地味な作業だったが、指先が進むたびに、画面の印象が少しずつやわらいでいくのが分かった。 「ここで迷わなければ、作品までたどり着ける」 それはたぶん、検索で見つけてもらうことと同じくらい大切だ。せっかく来てくれた人に、どこから触れればいいか分からないと思わせたくない。読み手の不安を減らすことが、結果的には作品の魅力をいちばん遠くまで運ぶ。正明はそう気づいて、思わず小さく息をついた。 修正後の見出しに目を通し、彼は満足げに口元を緩める。 「よし、これなら入口でつまずかない」 派手さはない。でも、安心して進める。正明は保存の操作を終え、静まった画面を見つめた。読んでもらうために必要なのは、ただ目立つことじゃない。迷わせないこと、その先で作品をちゃんと届けることなのだと、彼はようやく腹の底で理解した。

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