エラベノベル堂

神様の告白

全年齢

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10章 / 全10

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「……で、今日は何の用なんだよ」 花は玄関の敷居の内側に立ったまま、昨夜の余韻を抱えきれずにいた。つないだ手の感触も、章太のまっすぐな目も、まだ胸の奥でほどけていない。なのに、朝の光はあっさりと昨日を現実に戻してくる。 「用っていうか」 花は言いかけて、言葉を失った。玄関先の空気が、ふっと冷たくなる。見えないはずの気配が、またそこにいる。 「おはよう」 花の口から、勝手に懐かしい調子の声がこぼれた。 「ちょ、待って、今は来ないで……!」 心の中で叫んでも遅い。花の肩がすっと軽くなり、視界の端で、見慣れたはずの玄関が少しだけ違って見えた。 「おっと、今日はお邪魔するだけだよ」 花の言葉なのに、妙に楽しそうだ。 章太は一拍置いてから、ため息みたいに笑った。 「もう慣れるしかないのか、これ」 「慣れちゃだめでしょ!」 花が心の中で突っ込むと、章太は苦笑を深めた。どうやら、わずかな違和感だけで察しているらしい。 「分かる。今のは花じゃないな」 「え、分かるの」 「分かるようになってきた」 その返事に、花の胸が妙にくすぐったくなる。神様は、そんな二人のやり取りを面白がるように、花の体を軽く傾けた。 「で、今日はこれを渡しに来たんだよ」 そう言って、花の手が玄関脇の小さな荷物を持ち上げる。中身は、昨夜しまい忘れていた祭りの小物だった。 「そんなのわざわざ」 「わざわざじゃないと、顔を見に来る理由がないだろ」 花は心の中で真っ赤になった。章太も一瞬だけ目を丸くする。 「今の、聞き捨てならないんだけど」 「聞き捨てにしなくていいよ。素直になれっていう合図だ」 神様の声は軽いのに、不思議と押しつけがましくない。花は自分の意識の端で、悔しさと納得を同時に噛みしめた。 「合図って何だよ」 章太が笑いながら言う。 「神様にまで背中押されるの、どうなんだ」 「……別に、悪くないけど」 花は思わずそう返してしまい、すぐに心の中で頭を抱えた。章太はそんな花の気配を察したのか、少しだけやわらかい声になる。 「無理に何かしなくてもいい。でも、こうやってまた普通に話せるのは、嬉しい」 その言葉に、花の内側で張りつめていたものが少しだけほどけた。 神様も満足したように、花の口元を借りて小さく笑う。 「ほらね。こういうのがいいんだよ」 章太は困ったように肩をすくめ、それでも目を逸らさない。 花は、見えない相手と、すぐ隣にいる人の両方を感じながら、こわばっていた自分の呼吸が落ち着いていくのを知った。昨夜の約束は、まだ形になりきっていない。けれど、この気まぐれな合図がある限り、二人はまた素直になれる気がした。 「じゃあ、受け取った」 章太がそう言って、小さく笑う。 花の中で、神様が楽しげに身を引いた気配がした。玄関先には、朝の光と、少しだけ近づいた二人の距離だけが残っていた。

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夏祭りに出かけた幼馴染の女子は、浴衣姿がよく似合っていて、二人の空気は自然と甘くなる。だが歩き回ったせいで彼女の足が疲れ、裏の神社でひと休みすることに。そこで祀られている神様が彼女に憑依する。女子は身体のコントロールは一切できないが意識ははっきりしている。神様は、彼女がずっと言えなかった『好き』を勝手に相手へ伝えてしまい、戸惑いながらも本心を知った二人は、祭りの灯りの下で親密な関係に踏み込みそうになるというコメディ。その後もたまに神様が女子に憑依することになってしまうオチ。

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