夕暮れの空を、茜色に染まった雲がゆっくりと流れていく。神社の鳥居の前に立ち、隼太はスマートフォンの画面で時間を確認した。 「もうすぐか」 幼馴染の結衣と夏祭りに来る約束をしたのは一週間前のことだ。彼女から浴衣を着るという連絡が来た時、隼太は正直ドキッとした。普段はジーンズにTシャツというラフな格好が多い結衣。その彼女が浴衣を着るという想像が、なぜか隼太の心を騒がせた。 「隼太くん!」 聞き慣れた声に顔を上げると、鳥居の向こうから小走りで近づいてくる人影が見えた。淡い水色の浴衣に、白い花柄が散りばめられている。帯はピンク色で、アップにまとめられ、小さな花の髪飾りが揺れていた。 「……え」 言葉が出なかった。普段の結衣とはまるで別人のようで、女性らしさが引き立っている。浴衣の裾から覗く足首が妙に艶めかしく、隼太は思わず視線を逸らした。 「どう? 似合うかな」 結衣は少し恥ずかしそうに、浴衣の袖で口元を隠しながら聞いてきた。その仕草が可愛らしくて、隼太は鼓動が早くなるのを感じた。 「似合ってるよ。すごく」 「本当? お母さんに手伝ってもらったんだ。一人じゃ帯が結べなくて」 結衣は照れくさそうに笑った。その笑顔が夕日を背に輝いて見えて、隼太は胸が熱くなるのを抑えられなかった。 「じゃあ、行こうか。祭り」 「うん!」 二人は並んで歩き出した。参道の両脇にはすでに屋台が並び始め、揚げ物の香ばしい匂いや、リンゴ飴の甘い香りが漂ってくる。子供たちの笑い声や、遠くから聞こえる祭囃子が、夏の夜の訪れを告げていた。 「隼太くん、何食べたい?」 「そうだな……焼きそばとか?」 「じゃあ私、たこ焼きがいいな。あとリンゴ飴!」 結衣は子供のようにはしゃいで、隼太の袖を引いた。その無邪気な笑顔を見ていると、彼女が幼馴染であることを忘れそうになる。同じ年齢のはずなのに、今日はどこか大人びて見えた。 「わかったわかった、まずは屋台を見て回ろう」 「えへへ、楽しみ!」 結衣は隼太の方を向いて、満面の笑みを浮かべた。その瞳が夕暮れの光を受けてキラキラと輝いている。隼太は今日の結衣が特別に見える理由を考えようとして、やめた。ただ、この時間がずっと続けばいいと思いながら、二人は祭りのメインストリートへと足を進めた。
神様の告白
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