「優勝おめでとうございます!」 部室に歓声が響き渡り、掲げられたトロフィーが窓から差し込む日光を反射してきらめいた。大学の女子柔道部のエース、佐伯咲良は満面の笑みで同僚たちに囲まれている。 「当然の結果よ。私の実力なら全国でも通用するんだから」 彼女は胸を張り、誇らしげに髪をかき上げた。周囲の女子部員たちは呆れつつも、その実力は認めている。 「先輩、調子に乗りすぎですよ」 「乗らせておきなさいよ。だって本当のことだもの」 咲良はけらけらと笑い、ふと入り口の方に視線を向けた。ドア枠に寄りかかって、一人の男子学生が練習風景を眺めている。無表情で眼鏡をかけた、東城颯介だ。 「あ、颯介じゃない。見学に来てたの?」 颯介は軽く頷いただけで、特に言葉は返さない。いつもの無口な態度だ。 「相変わらず愛想がないわね。優勝報告くらい、おめでとうって言いなさいよ」 「おめでとう」 素っ気ない返答に、咲良はむっと眉を寄せた。 「やる気ないわね。そんな態度だと、私がどれだけ強いか、身をもって知ることになるわよ」 「知ってる」 「はあ?何よそれ」 颯介の言動に苛立ちを覚えた咲良は、部員たちが練習に戻るのを見計らって、彼に近づいた。 「いい?私は本気で全国を目指してるの。アンタみたいな、ただ見学に来るだけの男とは違うのよ」 「俺も柔道やってた」 「やってたって、今はやってないんでしょ?なら私に勝てるわけないわ」 咲良は挑発するように顎を上げた。 「もし私に勝てたら、何でも言うこと聞いてあげるわよ」 「本当か?」 「嘘ついてどうするのよ。でも無理ね。アンタじゃ私に指一本触れることもできないわ」 彼女は自信満々に笑い、颯介の顔を覗き込んだ。その瞳には、余裕とわずかな挑戦心が宿っていた。
約束の一本
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