エラベノベル堂

瓜二つの部下

18+ NSFW

小説ID: cmplg52r700be01ntstohyaik

1章 / 全10

「嘘だろ……引退なんて」 正樹はスマートフォンの画面を凝視したまま、呟いた。リビングのソファに深く沈み込み、手に持っていた缶ビールが温まるのも忘れている。お気に入りのAV女優が電撃引退を発表したのだ。SNSに投稿された手書きのコメントには、感謝の言葉と共に、自身の夢を追うためという理由が綴られていた。 「あんなに可愛かったのに。あの声、あの仕草、全部が最高だったのに」 正樹はため息をつき、空になった缶をテーブルに置いた。彼女の作品は何度も見返した。特に残業シチュエーションの作品は、社会人である正樹の心を熱くさせたものだ。窓の外には夜の街が広がっている。明日からまた日常が待っている。推しを失った喪失感を抱えたまま、正樹は眠りについた。翌朝、気怠い体を引きずって出社した正樹は、人事部から呼び出しを受けた。 「本日から配属になる新入社員を紹介する」 人事部の担当者が言い、背後に立っていた人物を手招く。振り返った女性を見た瞬間、正樹は呼吸を忘れた。黒髪のセミロング、切れ長の瞳、小さな唇。顔立ちのバランスも、首を少し傾ける仕草も、全てが見覚えがある。 「陽葵です。よろしくお願いします」 その声色。高さ、響き、話す時の独特の間。正樹は目を見開いたまま動けなかった。目の前にいる新入社員は、昨日引退を発表したばかりのAV女優と瓜二つだったのだ。 「……え」 正樹の口から漏れた声は、誰にも聞こえなかった。陽葵と呼ばれた彼女は、無邪気な笑顔で周囲に頭を下げている。 「正樹君、彼女の教育担当を頼むよ」 「は、はい」 正樹は引きつった笑みで答えた。心臓が早鐘を打っている。偶然なのか。それとも。陽葵がこちらを向き、にっこりと微笑んだ。 「よろしくお願いします、先輩」 その台詞と笑顔。正樹の記憶にある、彼女の代表作の冒頭シーンと完全に重なった。

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