エラベノベル堂

ラストワン

18+ NSFW

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8章 / 全10

唇が離れた瞬間、春菜は我に返った。自分から押し付けるように口づけたのは健人だ。なのに、離れられない。引き剥がすべきなのに、身体が強張って動かない。 「……何よ、これ」 「わかんねえよ」 健人の声が低い。いつもの皮肉な響きがない。ただ、荒い呼吸が春菜の唇を震わせた。 「あんた、何してんのよ」 「お前が近づいたんだろ」 「近づいてない!」 「近づいた」 言い争っているうちに、また唇が触れそうになる。春菜は健人の胸を押し返そうとした。だが、手は反抗的に服の生地を握りしめていた。 「離してよ」 「離せねえよ」 「どうして」 「わかんねえって言ってるだろ」 健人の手が、春菜の腰に回る。毛布が滑り落ち、冷気が肌を刺す。でも、寒さなんて感じなかった。健人の掌から伝わる熱のほうが、強烈だった。 「あんた、最悪よ」 「うるせえ」 「本当に、大嫌い」 「知ってる」 二度目のキスは、先ほどとは違った。触れ合うだけの優しいものではない。貪るような、奪い合うような、激しさだった。春菜の唇が割られ、健人の舌が滑り込んでくる。逃げようとしたが、追い詰められた。絡め取られ、吸い上げられ、息もできない。 「んっ……」 声が漏れた。自分の声とは思えない。甘く、濡れた響き。健人の手が背中を這い上がり、肩甲骨のあたりを強く押す。さらに深く、口づけが深まる。 「はぁ……っ」 やっと唇が離れたとき、春菜は酸素を求めて喘いだ。唾液が銀色の糸を引いて、炎の光に揺れている。健人の瞳が、暗い光を宿して春菜を見つめていた。いつもの苛立ちとは違う。もっと原始的で、飢えたような目。 「……お前、目、潤んでるぞ」 「潤んでない」 「潤んでる。鏡見てみろ」 「見ないわよ」 春菜は健人の首に腕を回していた。いつの間にか。自分の意志とは裏腹に、身体だけが勝手に動いている。あるいは、奥底に押し殺してきた衝動が、堰を切って溢れ出したのか。 「あんたのせいでしょ」 「俺のせいじゃねえ」 「あんたが変なことするから」 「変なことって何だよ」 「キスとか」 「お前もしてたろ」 「させられたのよ」 「嘘つけ」 健人の手が、春菜の脇腹を撫で上げる。服の上からでも、熱が伝わる。敏感な部分を擦られ、背筋が震えた。 「やっ……」 「やじゃねえだろ」 「やよ」 「嘘だな」 また唇が重なる。今度はもっと激しく。歯がぶつかり、痛いほどだ。でも、その痛みさえも快感に変わっていく。健人の指が、春菜の胸のふくらみを探る。服の生地越しに、掌で包み込むように。 「っ……んん」 春菜は自分でも信じられない声を上げていた。健人の肩に爪を立てる。頭の中が真っ白だ。大嫌いなはずの男。境界線を越えてくる敵。なのに、どうしてこんなふうに身体が熱くなるのか。健人の膝が、春菜の太腿の間に割り込んできた。

8章 / 全10

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