朝の光がショー会場のバックステージに差し込んでいた。健太は遥香の手を握り締めたまま、控室のドアを開けた。スタッフたちが準備に追われる中、二人の姿に気づいたプロデューサーの田中が眉をひそめて近づいてくる。 「おい、お前ら。提出期限は過ぎてるぞ。どっちが先に発表するんだ」 遥香が健太の横に並び、静かに口を開いた。 「どちらでもないです」 田中の顔が強張る。 「どういうことだ」 健太は手に持った二つのスケッチブックを広げた。遥香の衣装と、自分のデザイン。本来なら競い合うはずだった二つの作品。 「僕たちは、一つのコレクションとして発表します」 「はあ? お前ら、正気か。ライバル競争を放棄するってことか」 遥香が頷いた。 「そうです。私たちはもう、ライバルじゃない」 彼女の言葉に、健太は握った手に力を込めた。昨夜、二人が見つけた答え。競い合うのではなく、高め合う。奪い合うのではなく、生み出す。 「これは僕たち二人の作品です」 健太が宣言すると、田中は呆気にとられた表情で二つのスケッチを交互に見た。 「……シルエットが補完し合ってる。お前ら、最初からこうするつもりだったのか」 「いいえ」 遥香が微笑んだ。 「でも、今はそうすることが正しいとわかったんです」 スタッフたちがざわめき始める。だが、健太には聞こえなかった。遥香の感情が、手を通して伝わってくる。不安、そして確信。彼女も同じ思いだった。田中が深く息を吐き、腕を組んだ。 「本社には私から話しておく。……まあ、昇格枠はなくなったと思え」 遥香が健太を見上げた。 「これでいい?」 健太は彼女の瞳に映る自分を見つめ返した。 「構わない。僕は君と一緒に進む道を選んだ」 二人の周りに、誰にも見えない赤い光が揺らめいた。ビジネスパートナーとして、そして恋人として。新たな道の始まりだった。
検閲済みプロット
大手ファッションブランドでライバル同士の新人デザイナー、遥香と健太。徹夜の最終調整中、ワインを酌み交わし、互いの本音が漏れる。遥香の孤独を感じ取った健太が触れた瞬間、彼女の感情が色として視え始め、感覚までもが共有される超常現象が発生する。互いのデザインが相手を想って描かれていた事実に気づいた二人は、嫉妬と憧れが入り混じる色鮮やかな情熱の中、心身を重ね合わせる。










