エラベノベル堂

ライバルは今夜、隣に座る

18+ NSFW

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2章 / 全10

「休憩しないか」 健太が唐突に言った。遥香が顔を上げ、眉をひそめる。 「まだ終わってないわよ」 「わかってる。でも、このままじゃ脳が焼き切れそうだ」 健太はデスクの下からボトルを取り出した。以前、取引先から贈られた赤ワインだった。本来なら禁止されているオフィスでの飲酒。だが、この時間、この状況で咎める者はいない。遥香は数秒間健太を見つめ、ふっと肩をすくめた。 「一杯だけよ」 「もちろんだ」 紙コップに注がれたワインが、蛍光灯の下で深い臙脂色に揺れる。遥香がそれを受け取り、小さく口づけた。 「……美味しい」 彼女の声から、いつもの鋭さが消えていた。健太も紙コップを傾ける。安っぽい容器と上質な香りの不釣り合いさが、今の状況を如実に物語っていた。 「明日、どうなると思う」 健太が問いかけると、遥香は窓の外へ視線を向けた。 「私が選ばれるわ」 「自信たっぷりだな」 「事実よ。あなたのデザインは悪くない。でも、私の方が一枚上手」 挑発的な言葉だったが、その響きには力がなかった。アルコールが素早く回っている。疲労と緊張の糸が緩む感覚。遥香が紙コップを置き、ぽつりと漏らした。 「……一人じゃなかったから」 健太は聞き返せずにいた。彼女の瞳が、夜の闇と同じ色をしている気がした。 「何でもない」 遥香は顔を背ける。だが、その言葉は健太の胸に深く突き刺さっていた。彼女も、自分と同じ孤独を抱えているのか。ライバルとして競い合い、否定し合いながら、実は一人で戦う重圧に押しつぶされそうだったのか。健太はワインの残りを飲み干した。苦く、それでいて甘い余韻が口の中に広がる。

2章 / 全10

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