エラベノベル堂

記憶を染める和紙

18+ NSFW

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10章 / 全10

イメージが途切れ、陸は激しい眩暈に襲われた。現実の蔵へと意識が戻る。冷たい土の感触、古い紙の匂い。心臓が早鐘を打ち、額に汗が滲んでいる。 「……はぁ、はぁ……」 荒い息を吐きながら、陸は日記の最後のページへと目を落とした。そこには、それまでの筆跡とは異なる、見覚えのある文字が記されていた。『この和紙は書き手の記憶ではなく、読み手の最も深い欲望を映す』——祖母の書き置きだった。 「え……?」 陸は呆然とした。百年前の女給の記憶ではなかった。結に似た女給が三人の男に奉仕し、快楽に溺れる光景。あれはすべて——陸自身が結に抱いていた秘めた想いだった。 「嘘だ……」 頭を振るが、否定できなかった。結を想うたびに押し殺してきた昏い感情。幼馴染として接してきた裏で、ずっと抱き続けてきた欲望。和紙はそれをありのままに映し出したのだ。 「ん……」 微かな呻き声が聞こえた。見ると、結がまぶたを震わせ、ゆっくりと目を開けていた。 「陸……くん……?」 まだ意識が朦胧としているのか、彼女の声は甘く潤んでいた。頬の紅潮は引いておらず、唇は微かに開いている。陸は息を呑んだ。日記のイメージの中で快楽に溺れる女給と、目の前の結が重なって見えた。 「……大丈夫か?」 やっと絞り出した言葉は、震えていた。結はゆっくりと身を起こし、焦点の定まらない瞳で陸を見つめた。 「私……変な夢を……」 彼女は自身の胸に手を当て、荒い吐息を漏らす。 「身体が、熱い……」 陸は何も言えなかった。返す言葉が見つからない。全てを理解してしまったからこそ、結の顔をまともに見ることができなかった。沈黙が二人の間に流れる。古い蔵の静寂の中、互いの呼吸音だけが響いていた。結が不思議そうに首を傾げる。 「陸くん、どうしたの……? なんだか、顔が赤いよ?」 その無垢な問いかけが、陸の心を深く刺した。

検閲済みプロット

東京から京都へ戻った女学生・結は、亡き祖母の和紙問屋を同級生・陸と継ぐ。代々家宝とされている手漉き和紙には「墨が触れた瞬間、誰かの記憶が滲み出る」性質があり、百年前の恋文や物語が記憶として再現される。ある日、結がその和紙に書かれた古い日記を見つける。触った瞬間に強烈な記憶の再現とともに、結は気を失ってしまう。陸もその日記を読もうとしたが、それは100年ほど前のとある政治家に仕える女給の日記であった。結に似た女給が性的奉仕を政治家たちに行い悦びを感じているイメージが、陸の中に流れ込んでくる。最後は意外な結末となる。

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