昼の光は、朝より少しだけはっきりと机の上を照らしていた。澪はパソコン画面を見つめたまま、指先でマウスを小さく動かす。 「……よし。まずは見た目からだよね」 画面に並ぶ自分のサイト名を眺めて、澪は眉を寄せた。悪くはない。けれど、ぱっと見で何をしている場所なのか伝わりにくい気がした。作品の雰囲気に合わせたつもりの名前も、初めて来る人にはただの記号かもしれない。 「サイト名、ちょっと考え直そうかな」 呟いてから、澪はメモ帳を開いた。候補を書いては、声に出して読んでみる。硬すぎると近寄りがたく、軽すぎると作品の印象がぼやける。何度かペンを止めて、結局は今の名前を少しだけ整える方向に落ち着いた。 次に、紹介文。ここがいちばん曖昧だった。自分では分かっていても、読者は最初の数行で判断する。長い説明は読まれない。短すぎても、中身が伝わらない。 「どういう作品があるのか、ひと目で分かるようにしたいな」 澪は文章を打ち直し、余計な言い回しを削った。登場する世界、雰囲気、読み味。その三つが自然に浮かぶように、言葉を選び直していく。修正するたび、もやが少しずつ晴れていく気がした。 作品カテゴリの一覧も見直した。似た系統の話が離れすぎていれば、探す人が迷う。逆に、並びが揃えば、次に読む作品へ目が流れやすい。澪は作品名を指でなぞりながら、関連の強いものを近づけていく。 「これなら、少しは辿りやすいかな」 更新履歴の表示も気になった。いつ動いたのかが分かれば、今も手を入れていることが伝わる。古いまま止まって見えるより、少しずつでも動きがある方がいい。澪は見出しの位置を確認し、更新の記録が目に入りやすい形を思い描いた。 派手なことをするわけじゃない。ただ、読みに来た人が迷わないように整えるだけだ。それでも、画面の向こうにいる誰かを想像すると、作業は急に現実味を帯びた。 「読んでもらうための形、ちゃんと作らないと」 キーボードを打つ音が、部屋に小さく続く。澪は紹介文の最後をもう一度読み、納得がいくまで少しだけ言葉を削った。すぐに結果が出るとは思っていない。それでも、何もしなければ届かない。 机の上には、書き直したメモが何枚も増えていた。澪はそれらをまとめて脇に置き、画面の中で整い始めたサイトを見つめる。地道で、目立たなくて、それでも必要な一歩だ。そう思った瞬間、次に直す場所が、もうひとつ見えてきた。
積み上げる読者
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