エラベノベル堂

作品を届ける導線

全年齢

小説ID: cmqfwcnmm0q3401o3hn2tvouv

1章 / 全10

結城彩は、画面の奥に並ぶ数字を見つめて小さく息を吐いた。自分たちが運営している文芸投稿サイト、erabenovel.com。作品には手応えがあるのに、検索でたどり着きにくい。その事実が、じわじわと胸の内を冷やしていた。 「なんで、こんなに埋もれるのかな……」 独り言は、編集室の白い壁に吸い込まれる。朝の光がブラインドの隙間から斜めに差し込み、机の上の紙コップに細い影を落としていた。彩はノートパソコンを開き直し、アクセス状況の画面を改めて確認する。どこから来たのか、どのページで離れたのか。数字は正直だが、親切ではない。 「まずは現状把握、だよね」 そう口にすると、少しだけ気持ちが落ち着いた。焦っても画面は変わらない。なら、変えるための材料を集めるしかない。彩はマウスを動かし、検索経由の流入を示す欄に視線を止めた。予想より少ない。いや、少ないどころではない。作品を丁寧に載せてきたつもりなのに、入口の前で足を止められているようだった。 「見つけてもらえないなら、読まれる前に終わっちゃう」 その言葉を飲み込んだ瞬間、背後の棚がかすかに鳴った。古い資料や印刷見本が並ぶ狭い編集室では、少し身じろぎするだけで音がする。彩は椅子にもたれず、背筋を伸ばした。悩んでいるだけでは進まない。まずは、このサイトが今どう見えているのかを知る。 検索結果の表示、作品への入り口、読者が最初に目にする案内。順番に確かめる必要がある。彩は画面を切り替え、見慣れたサイトのトップを開いた。すっきりしたデザインのはずなのに、今はどこか曖昧に見える。何を読ませたいのか、ひと目で伝わっていない気がした。 「えらべる、って名前は好きなんだけどな」 小さく笑ってみても、悩みは消えない。好きなサイトだからこそ、埋もれたままにはしたくない。彩は指先で机を軽く叩き、もう一度アクセス状況に戻った。ここから始めよう。どこが弱いのか、何が足りないのか。ひとつずつ拾い上げれば、道は見えるはずだ。

1章 / 全10

TOPへ
作品を届ける導線 | エラベノベル堂