エラベノベル堂

作品を届ける導線

全年齢

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2章 / 全10

結城彩は、さっきまで見つめていた数字から視線を上げ、同じ編集室の空気をゆっくり吸い込んだ。昼の光は朝よりも白く、机の上の紙やモニターの縁をはっきり浮かせている。だが、erabenovel.com の輪郭だけは、まだ曖昧なままだった。 「原因を、ちゃんと見よう」 誰に言うでもなくつぶやいて、彩はトップページを開いたまま、別のタブで作品紹介ページを呼び出した。タイトル、見出し、説明文。並べてみると、どれも悪くはない。けれど、悪くないだけでは足りない。読者が最初に知りたいのは、このサイトが何を置いていて、どこへ進めばいいのか、その一番目立つ案内だった。 「見てる側の目線で考えると、ちょっと遠いかも」 ページを行き来しながら、彩は眉を寄せた。作品紹介には作品紹介の役目があり、トップページにはトップページの役目があるはずなのに、今の構成はその境目がぼやけている。丁寧に作ったつもりの文章が、入口で重なり合って、かえって迷わせている気がした。 彩はメモ帳を開き、思いついたことを短く書きつける。作品名が先に見えるほうがいい。説明文は長すぎないほうがいい。リンクは埋もれず、次に押す場所がわかるほうがいい。書きながら、胸のつかえが少しずつ形を持ち始めた。 「ここ、同じ言い回しが二回出てくるな」 「トップで全部説明しようとしてるのかも」 「読者に渡したいのは情報じゃなくて、入り口だよね」 ひとりで言葉を重ねていると、雑然としていた違和感が整理されていく。彩は作品紹介ページの説明文を指で追い、トップの見出しへ目を移した。似た意味の文が近くに並んでいる。これでは、せっかくの作品ごとの魅力が前に出ない。 机の端に置いた飲みかけの缶コーヒーは、すっかりぬるくなっていた。彩はそれを手に取って一口飲み、苦さに顔をしかめる。 「うう、でも、こういうのって地味だよなあ」 派手な宣伝文句を足せば目立つのかもしれない。けれど、今必要なのは勢いよりも、どこに何があるかをきれいに示すことだった。彩はまたメモに戻り、リンクの並び順と説明の重なりを矢印でつないでいく。頭の中で霧になっていたものが、少しずつ地図の線に変わっていった。 「まずは、このへんから直そう」 そう呟いたとき、彩の視界には、検索で見つからない理由がはっきりしたわけではないにせよ、見直すべき場所が確かに並んでいた。トップページの見出し、作品紹介の説明、そこへ至る導線。ひとつひとつは小さい。でも、その小ささを放置したままでは、サイト全体が埋もれたままになる。 彩はペン先を止め、メモの最後に丸を付けた。次に見るべき項目が、もう見えている。

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