エラベノベル堂

作品を届ける導線

全年齢

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8章 / 全10

結城彩は、サーバー管理画面の青白い光を見つめながら、思わず息を止めた。隣では相沢誠が、公式の設定項目を一つずつ開いて確認している。夜の編集室は静かで、キーを打つ音だけが小さく響いた。 「ここ、古い案内がまだ残ってるな」 誠がそう言うと、彩は自分の画面をスクロールした。 「ほんとだ。同じ説明も、別の場所に重なってる……」 古い案内文は、今の導線と少しずつ食い違っていた。読者を迷わせるほどではない。でも、積み重なれば小さな綻びになる。彩は削除ではなく、まず整理を選んだ。残すもの、まとめるもの、言い回しを変えるもの。目の前に並ぶ文を見比べるたび、ばらけていた輪郭が少しずつ揃っていく。 「この文、こっちに統合できるね」 「うん。あと、この案内は短くしたほうがいいかも」 「そうだな。設定画面って、派手さより見通しだから」 誠の言葉に、彩は小さくうなずいた。地味な作業だった。けれど、画面の中の混線がほどけていく様子は、見ていて妙に気持ちがいい。重なっていた説明がひとつ消えるだけで、次に何をすればいいかが、急にわかりやすくなる。 「なんだか、片付けてるだけなのに、前に進んでる気がする」 「それで正しい。見た目の大きな変化より、土台が整うほうが効く」 彩は古い案内を閉じ、更新の済んだ項目に印を付けた。空白が少し増え、画面が軽く見える。重複した説明が減るたび、読者に届く言葉もはっきりしていく気がした。 「まだ全部じゃないけど、だいぶ見やすくなったね」 「そうだな。少しずつでも、確かに整ってる」 誠の返事は淡々としていたのに、不思議と励まされた。彩は最後の案内文を選び、文面を読み直す。古いまま残しておくべきではない一文が、そこにまだあった。 「これも、今の形に合わせて直そう」 そう言って編集を開いた瞬間、画面の端でひとつだけ、まだ整理しきれていない設定項目が静かに点滅していた。

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