エラベノベル堂

作品を届ける導線

全年齢

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9章 / 全10

結城彩は、無人の編集室でモニターに映る特集ページを見つめた。深夜の静けさは、昼間には気づかなかった細かな歪みまで浮かび上がらせる。作品の並びは悪くない。けれど、今のままでは読者の視線が途中で止まる気がした。 「……もう少し、回りやすくしたいな」 独り言に応える声はない。隣の席では相沢誠が、腕を組んだまま画面を覗き込んでいた。 「順番を変えるだけで、かなり印象は変わる」 「だよね。入口から入ったあと、次に行く先が見えやすいほうがいい」 彩はマウスを動かし、特集内の作品を並べ替えた。重たい作品を先に置くのではなく、雰囲気の近いもの同士をそっと寄せる。読み終えたあと、自然に別の作品へ手が伸びるようにしたかった。 「この並びだと、恋愛系の作品がまとまって見えるね」 「うん。あと、短い紹介文の流れも揃ってきた」 誠は画面の端を指差した。 「こっちから見ると、サイト全体の輪郭がかなりはっきりするな」 その言葉に、彩は少しだけ目を見開いた。ページ単体を整えているつもりだったのに、気づけば全体がひとつの地図みたいに見えている。作品と作品のつながりが、ただ置かれているだけではない意味を持ち始めていた。 「本当に、つながって見える……」 彩は小さく息を呑む。各ページでばらばらに見えていた案内文も、更新の見せ方も、今は同じ方向を向いている。読者が迷わず渡っていける道筋が、静かに浮かび上がっていた。 「派手じゃないのに、不思議だね」 「地味な調整ほど、全体には効く」 誠の返事は淡々としていたが、彩には妙に胸に残った。見つけてもらうために急ぐのではなく、回遊しやすい形に整える。その積み重ねが、作品そのものの温度まで伝えてくれる気がする。 彩は最後に一度だけスクロールし、配置の間隔を整えた。すると、画面の中で作品群が落ち着いて並び、サイト全体の輪郭がさらにくっきりした。 「これで、だいぶ見えてきたかも」 「うん。次に何を読むか、迷いにくい」 彩はうなずき、整った特集ページを見つめたまま手を止めた。無人の編集室には、キーボードの余韻だけがかすかに残っている。画面の奥では、作品同士のつながりが静かに光っていた。

9章 / 全10

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