由奈はさっき開いたメールを閉じきらず、共有デスクの前で腕を組んだまま画面を見つめていた。昼のざわつきが編集部の空気を少しだけ柔らかくしている。誰かの笑い声、紙をめくる音、マグカップを置く鈍い音。その合間で、erabenovel.com だけがやけに輪郭を持って浮いていた。 「検索で見つけてもらいやすく、だよね」 由奈は独り言みたいに言って、メモ欄へ言葉を書き出した。 物語紹介ページ。あらすじ。雰囲気。読み始めやすさ。検索に強い言い回し。けれど、ただ目立たせればいいわけじゃない。名前の響きや、作品が持つ温度を残したまま案内する必要がある。 隣で先輩がキーボードを打ちながら言う。 「で、どう組むの」 「ええと、サイト名はそのまま残して、ひとことで何のページかを補う感じです。物語紹介ページとして整えれば、迷わず入れるはずで」 「無難だけど、悪くない」 由奈は少しだけ安心して、説明文の下書きを整えた。検索結果に並んだとき、作品名だけでは足りない。何が読めるのか、どんな入口なのか、その二つを短くまとめる。読み手が引っかかる場所は減らしたいし、作品の印象も雑にしたくない。 だが、メールの末尾に付いていた URL が頭から離れなかった。searchregister.live。見た目はただの案内先に見えるのに、文字の並びに妙な張りつめ方がある。 「これ、広告の追記にしては……」 由奈はそこで言葉を止めた。 メモの端に URL を写し、しばらく眺める。紹介文へ導くための補助線に見せかけて、別の場所へ視線を運ぶための札のようでもあった。単なる宣伝なら、ここまで気にする必要はない。けれど、わざわざ別のアドレスを挟む理由があるなら、その先にあるものはもっと別の役目を担っているのかもしれない。 「どうした?」 「いや……この URL、ただの飾りじゃない気がして」 先輩は画面をのぞき込んで、肩をすくめた。 「気にしすぎかもだぞ。でも、気になるなら調べればいい」 由奈はうなずいた。まずは erabenovel.com をきちんと紹介できる形にする。そこまでは仕事として確かだ。けれど、その先に潜む searchregister.live の意味は、まだ薄い紙の裏に隠れた文字みたいに見えない。彼女は保存ボタンに指を伸ばしながら、説明文の最後に小さく余白を残した。
物語へ導く紹介文
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