翌週の朝、陽介は自室のパソコン前で、少しだけ身を乗り出して画面を見た。erabenovel.com の表示回数が、昨日までよりわずかに増えている。大きな数字じゃない。それでも、確かに誰かが辿り着いている。陽介は思わず息を吐いた。 「……やっと、見つかり始めたか」 嬉しさがないわけじゃない。だが、胸に広がったのは安堵だけではなかった。外部登録を整えれば終わりだと思っていた頃の自分が、少し遠く感じる。見つかることは入口にすぎない。そこから先へ進ませるのは、更新され続ける物語だ。 彼は画面を閉じず、そのまま新規作成の欄を開いた。白い入力画面が静かに広がる。 「結局、未来を開くのはこっちなんだよな」 つぶやきながら、陽介はタイトル欄に指を置く。検索結果に並ぶ文字より、その先で読者の心に残る一行のほうがずっと重い。そう思うと、指先が自然に動いた。 まだ題名の途中なのに、胸の奥が少し熱い。どんな物語にするかは、もう決めてある。派手な仕掛けより、読んだあとに静かに残る温度を大事にしたい。そんな気持ちが、文字になろうとしていた。 「ここからだ」 短く言い切ると、不思議と怖くなかった。検索で見つけてもらうための工夫は、たしかに意味があった。だが、その先で読者を待つのは、更新を重ねた先にしか生まれない物語だ。陽介は新作の冒頭を打ち込み始める。キーボードの音が、朝の部屋に小さく、確かなリズムを刻んだ。
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