エラベノベル堂

検索に届く物語

全年齢

小説ID: cmrcga7ol000o01pczhzm01f3

2章 / 全10

昼になっても、机の上の空気は朝とあまり変わらなかった。けれど陽介の視線だけは、ノートからノートパソコンへと移っている。開いたままの画面には、erabenovel.com の紹介ページが表示されていた。 「ここ、もう少し伝わる言い方にしたほうがいいな」 陽介は小さく呟いて、指先でキーボードを叩いた。自分ではわかっている言葉でも、初めて来た人には届かない。そう思うと、いくつかの表現が急に硬く見えてくる。 たとえば、作品の説明。今までは短くまとめたつもりの一文だったが、読み返すと少し味気ない。陽介は画面を見つめながら、登場人物の心の動きや、どんな雰囲気の話なのかが想像しやすい言葉へ少しずつ置き換えていった。 「これなら、どんな話か掴みやすいか」 独り言に答えるように、彼はもう一行足す。検索で見た人が、続きを知りたくなる入口を作るつもりだった。派手な言い回しではない。けれど、曖昧だった輪郭が少しずつ浮かび上がってくる。 次はサイトの説明文だ。何を載せているのか、どんな小説が読めるのか、短くても誠実に伝える必要がある。陽介は文末の語感まで確かめながら、読み手の立場で声に出してみた。 「うん、こっちのほうが、素直だな」 画面の中で、言葉が並び直していく。自分では大差ないように思えた修正が、いざ整えてみると印象を変えていた。見出しの順番を入れ替え、似た意味の言葉を削り、ひと目でわかる表現を残す。そのたびに、ページ全体が少しずつ軽くなる。 作業は地味だった。けれど、地味だからこそ、手応えは確かだった。文字が整うたび、誰かの目に触れたときの迷いが減る気がする。 陽介は椅子にもたれ、しばらく画面を眺めた。 「……前より、入りやすくなったかも」 その呟きは大きくない。それでも、胸の奥に残っていたもやが少し晴れた。検索で見つけてもらうために必要なのは、難しい工夫ばかりじゃない。読み手にちゃんと届く言葉へ直すこと。その単純さが、今はむしろ頼もしかった。 彼はもう一度、上から下までページを見直す。まだ直せるところはある。だが、確かに一歩進んだ実感があった。陽介はキーボードの上に指を置き、次の文を打ち込む準備をした。

2章 / 全10

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