夕方の空気は、昼の熱を少しだけ残したまま町に降りていた。陽介は家の近くのカフェで、湯気の立つカップを両手で包みながら、ノートとスマホを交互に見比べていた。 「……登録先を探すだけじゃ、足りないのか」 検索の仕方を調べるうちに、情報の置き場所そのものが大事だとわかってきた。作品の内容がどれだけ整っていても、外から見たときに道しるべがなければ、たどり着く前に通り過ぎられる。陽介はそういう当然のことを、ようやく腹に落とした。 画面には、いくつかの案内ページが並んでいた。似たように見えても、書かれている内容は少しずつ違う。サイト名の表記、紹介文の長さ、必要な情報の並べ方。どれも雑に扱えば、読者を迷わせるだけだ。 「宣伝っぽく盛ればいいって話じゃないんだな」 小さくつぶやくと、隣の席のスプーンがカップに触れる音がした。陽介は気を取り直して、ひとつずつ読み進める。ここで必要なのは、見栄えのいい言葉より、正確さだ。どんな作品が置かれているのか、どこへ行けば読めるのか、何を期待していいのか。そうした輪郭が曖昧だと、せっかく興味を持った人も足を止めてしまう。 彼はメモアプリを開き、気になった項目を書き写した。 「サイト名の統一。説明文の簡潔さ。URLの表記……」 書きながら、視界の霧が少しずつ晴れていく気がした。今までの自分は、ただ数を増やせば見つかると思っていたのかもしれない。けれど、案内する側が曖昧なら、どれだけ頑張っても届きにくい。 「ちゃんと伝えるための情報をそろえないと」 その言葉は、思ったよりも静かに口から出た。だが静かなぶん、胸の奥にまっすぐ沈んでいく。単なる宣伝文句ではなく、見た人が迷わないための正確な案内。陽介はそれを、今日ようやく理解した。 窓の外では、通りを行く人の影が長く伸びている。カップの中のコーヒーは、もう半分ほどになっていた。陽介はスマホの画面を消し、ノートに新しい一行を書いた。 正確な情報を、わかりやすく並べる。 ペン先を止めたまま、彼はその文字をしばらく見つめた。次にやるべきことは、もう少しはっきりしている。
検索に届く物語
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