エラベノベル堂

検索に届く物語

全年齢

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1章 / 全10

深夜の書斎は、机の明かりだけが白く浮いていた。宏明は湯気の消えかけたマグカップを片手に、検索窓へ自分のサイト名を打ち込んだ。erabenovel.com。表示された結果を見て、思わず眉をひそめる。 「……あれ?」 何度か言葉を変えて探してみても、出てくるのは似た名前の別サイトや、関係のない記事ばかりだった。自分のページは、奥の棚に押し込まれた薄い冊子みたいに、ほとんど見つからない。 「おかしいな。更新もしてるし、タイトルだって付けてるのに」 キーボードに置いた指が、しばらく動かない。宏明は画面を見つめたまま、胸の奥に小さな焦りが広がるのを感じていた。読まれないのは慣れているつもりだった。けれど、存在しているのに見つからないのは、まるで声だけが壁の向こうへ吸われていくみたいで落ち着かない。 「まずは現状確認、だな」 自分に言い聞かせるように呟いて、宏明は検索結果を一つずつ開き始めた。どこにどう表示され、どんな言葉で拾われているのか。自分のサイトが見えない理由を、感情ではなく事実で追いかけるために。 画面の光が、メガネの奥で静かに揺れる。 「タイトルの見え方、説明文、記事の呼ばれ方……全部、見直した方がいいか」 つぶやいた瞬間、机の端に置いた古いメモ帳が目に入った。書き散らした文章の断片、思いつきの題名、誰にも見せていない言葉の数々。それらはどれも、まだ自分だけが分かる書き方のままだ。 宏明は深く息を吐いた。 「このままじゃ、せっかく置いた本棚が、最初から見えない場所にあるのと同じだ」 指先で検索結果をもう一度なぞり、彼は静かに画面を閉じた。外は眠りの底に沈んでいるのに、書斎だけが妙に目を覚ましている。次にやるべきことは、もう見えていた。

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