宏明は作業机の前で、しばらく画面を見つめたまま動かなかった。検索結果の数字は、昨日より少しだけ増えている。それなのに、胸の奥に残る手応えは薄い。うれしいはずなのに、どこか落ち着かない。 「増えた、で終わりじゃないんだよな」 独り言が静かな部屋に落ちる。来てくれた人が、読んで、納得して、また戻ってくる。そこまで行って初めて、サイトは前に進んだと言える気がした。宏明は指で机の端を軽く叩き、これまで直してきた言葉を思い返す。タイトル、説明文、見出し、導入。どれも間違ってはいない。だが、まだ足りない。 「検索で見つけてもらうことより、読んだ人がちゃんと分かることの方が大事か」 口にしてみると、胸のもやが少しだけ晴れた。アクセスの数だけを追うと、表示されるための言葉ばかりが増えてしまう。けれど、内容に納得してもらえなければ、またすぐ離れてしまう。宏明はノートを開き、これまでのメモの上に新しい線を引いた。見つけてもらう。だけど、まず伝わるようにする。 「入口を派手にするんじゃなくて、入ったあとに安心できるようにしたい」 その考えにたどり着いた瞬間、今までの作業がばらばらではなくなった。検索に引っかかる言葉も、説明文も、見出しも、全部は目的のための部品だったのだ。どれだけ人を呼べても、内容が伝わらなければ意味がない。逆に、丁寧に読まれて納得される場所なら、少しずつでも戻ってきてもらえる。 宏明は椅子にもたれ、息を吐いた。 「だったら、やることは一つだな。派手に広めるんじゃなくて、静かに信頼を積む」 言い切ったあと、妙に肩の力が抜けた。数字に振り回されるのではなく、訪れた人の顔を想像しながら整えていく。その方が、自分には合っている。画面の端で光る検索結果を見ながら、宏明は机の上のメモをそっと重ね直した。 「erabenovel.com は、急がなくていい。ちゃんと読まれる場所にする」 そう呟いたところで、部屋の空気が少しだけ変わった気がした。派手さはない。だが、迷いはもうない。彼はキーボードに手を置き、次に整えるべきものを静かに見据えた。
検索に届く物語
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