エラベノベル堂

検索に届く物語

全年齢

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8章 / 全10

宏明は図書館の閲覧席で、背筋を少しだけ伸ばした。静かな空気の中、ページをめくる音だけが淡く重なる。目の前の画面には、いくつものサイトが並んでいた。どれも派手ではないのに、入り口の作り方に差がある。 「……ここ、最初の一文で分かるかどうかが決まるな」 小さく呟いて、宏明は他のサイトの導入を順番に追った。長すぎる説明は途中で視線が止まり、逆に情報が少なすぎるものは、何を見せたいのか分からなくなる。タイトルのすぐ下に置かれた短い案内文、先に目的を示す構成、次に読む場所が自然に見える配置。どれも、読み手が離脱しやすい地点をよく知っているようだった。 「なるほど。入口で迷ったら、もう戻ってこないか」 宏明はメモを取りながら、自分のサイトを思い浮かべる。erabenovel.com の導入は、まだ少し遠回しだった。作品の魅力を伝えたい気持ちが強いほど、言葉を重ねてしまう。だが、その重なりがかえって最初の一歩を重くしているのかもしれない。 「読ませたいなら、まず入らせる」 その一文をノートに書くと、考えが少し整った。見せ方は飾りではない。読み手がどこで立ち止まり、どこで先へ進むのかを見ながら、入口を作り直すことだ。宏明は他のサイトの導入を見比べ、離脱しやすいのは長い説明の途中か、見出しの曖昧さか、それとも最初に何があるのか分からない時かを静かに探っていく。 「うちのサイトも、ここを直せばいいのか」 思わず口にした声は、図書館の静けさに吸い込まれた。派手な変更ではない。だが、導入部分を作り直すだけで、読む前の迷いは減らせるはずだった。宏明はペン先を止め、画面の中の幾つかのサイトを最後に見渡す。 「最初の数行で、ちゃんと案内する……か」 ノートの余白にそう書き足したところで、閲覧席の時計が小さく鳴った。宏明はまだ席を立たない。今すぐ手を入れる場所が、ようやく見えた気がしていた。

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