相沢朝陽は、画面の白い光に目を細めた。ノートパソコンの中には、自分が積み上げてきた小説が並んでいる。どれも書き上げるのに時間がかかった。けれど、更新通知が静かなままの夜は、達成感よりも、ぽっかり空いた気分のほうが大きかった。 『作品はあるのに、読まれないんだよな』 独り言は部屋に吸われて、すぐ消えた。朝陽は天井を見上げてから、もう一度サイトのトップに戻る。erabenovel.com。自分でつけた名前なのに、今日は少しだけ遠く感じた。 「なんで、見つけてもらえないんだろ」 検索窓に作品名を打ち込む。いくつかの結果が並ぶが、朝陽のサイトはずっと下のほうで、ようやく姿を見せた。指先が一瞬止まる。面白いと思って書いた。続きが気になるように工夫もした。なのに、入口に立ってもらう前に、ほとんどの人が通り過ぎてしまうらしい。 朝陽は椅子にもたれ、スマホを手に取った。目についたのは、個人サイトの見つけやすさを紹介する記事だった。難しい設定の話かと思って開いたが、読んでいくうちに、意外と基本が大事だと分かってくる。作品の題名、紹介の言葉、どこに何があるか。そういう小さな積み重ねで、辿り着きやすさは変わるらしい。 「へえ……ただ置いておくだけじゃ、届かないのか」 朝陽は自分のサイトを開き直した。表紙は悪くない。けれど、初めて来た人の目線で見れば、何の話が、どこに、どう並んでいるのか、少し分かりにくい気がする。作品はある。足りないのは、作品へ向かう道だ。 胸の奥で、ずっと固まっていた何かが、わずかに動いた。 「なら、変えればいいのか」 呟いた瞬間、さっきまでの沈んだ気分に、細い火が灯る。派手な奇跡じゃない。ただ、少しでも多くの人の目に触れる可能性があるなら、試す価値はある。朝陽はメモアプリを開き、思いつくままに書き始めた。作品名の見せ方。紹介文。どこから読めばいいか。迷っていたはずなのに、手は止まらない。 「読んでほしい、か」 その一言を打ち込んだところで、朝陽はふっと息を吐いた。まだ何も変わっていない。でも、今夜はもう、見えない壁の前で立ち尽くしているだけではない。小さなサイトを、もっと遠くへ届かせるための最初の一歩が、たしかに始まっていた。
物語を届ける紹介文
全年齢小説ID: cmsoz5hc0000o01pc60f0tteo
