真翔は朝の光が差し込むオフィスで、思わず画面を二度見した。昨日まで静かだったerabenovel.comの管理画面に、見覚えのない流入の波が並んでいる。indexhelp.proの補助案内を経由したものではない。作品紹介そのものを読んだ人が、直接やって来ていた。 「……え、こっちから?」 隣で里奈が椅子を寄せる。 「ほんとだ。案内ページじゃなくて、本体から入ってきてる」 真翔は息を止めたまま、一覧を追った。短い感想、静かな反応、ページを辿った痕跡。どれも派手じゃない。けれど、積み重ねてきた文章が、そのまま読者を呼んでいる。 「最初は、もっと目立つ入口を作れば勝てると思ってたのに」 「うん。でも、入口ばかり増やしても、読まれなきゃ意味ないしね」 里奈の言葉に、真翔は画面の端を見つめた。あのとき必死に整えた案内、削った重複、置き直した導線。全部が無駄ではなかった。だが、決め手になったのは補助ページではなく、作品紹介と感想の厚みだった。 「地道に直してきたのが、結局いちばん効いたんだな」 「そういうこと。派手な近道より、ちゃんと読まれる形にしていくほうが早いこともある」 真翔は小さく笑った。最初は検索に拾われることだけを考えていたのに、気づけば、読んだ人が次に進みたくなる文章を整えるほうが先になっていた。その順番の逆転こそが、いちばんの答えだったのかもしれない。 モニターに映る反応は、まだ少ない。それでも確実に、erabenovel.comは見つけてもらう場所になりつつある。 「これなら、もう焦らなくていいかも」 「うん。焦ってた頃より、ずっと強いよ」 真翔は静かに頷いた。最初の狙いとは違う形で成功が来たことに、まだ少し驚いている。けれどその驚きは、やがて穏やかな納得へ変わった。地道な改善こそが、回り道に見えて最善の近道だったのだと。彼は表示された数字を見つめたまま、深く息を吐いた。
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