「削るのは、宣伝文のほうでいいよな」 真翔は自分に言い聞かせるように呟き、デスクの前でペンを回した。画面には、昼に整えた案内の原稿が開かれている。けれど今は、そこに並んだ飾りの多さが、少しだけ鼻についた。 「うん。派手な言い回し、もういらない」 向かいの席で里奈が頷く。彼女はマウスを動かし、余分な一文に線を引いた。宣伝らしい強い言葉を外していくと、文章の輪郭がかえってはっきりしてくる。 「これで作品紹介を増やせるね」 「そう。見た目の勢いより、何が読めるかのほうが大事だから」 真翔は新しい欄を開き、erabenovel.comに載せる紹介文を打ち込んだ。物語の雰囲気、読みどころ、どんな気分のときに合うか。短いのに、ちゃんと作品へ手を伸ばしたくなる言葉を選ぶ。 「これなら、ただの宣伝ページじゃなくなる」 里奈が少し表情をやわらげた。真翔も、肩に残っていた力が抜けていくのを感じる。案内だけで押し切ろうとすると、どこか空回りする。でも、作品の中身を先に置けば、言葉は自然に落ち着く。 そこへ、里奈が別のウィンドウを開いた。 「感想も入れよう。利用者の声があると、読んだ人が自分の感覚を重ねやすいし」 「たしかに。生っぽい反応のほうが伝わるか」 二人でメモを見比べながら、短い感想を丁寧にまとめていく。派手な賛辞より、読んだあとに残る温度。言い切りすぎない言葉のほうが、かえって本音らしく見えた。 「この一文、いいね。押しつけがましくない」 「うん。読んだ人が、ちょっと覗いてみようかなって思える」 保存を重ねるたび、画面の印象が静かに変わっていく。大きな見出しで引っ張るのではなく、作品紹介と感想が並ぶことで、ページ全体に落ち着いた厚みが出てきた。 そのとき、真翔の端末に小さな通知が並び始めた。短い感想、静かな反応、興味を示す一言。どれも派手ではないのに、確かに届いている。 「……少しずつ、来てる」 真翔は目を丸くした。 里奈も画面をのぞき込み、ふっと息を漏らす。 「こういうのが一番いいんだよ。急に爆発するより、ちゃんと見つけたい人が反応してる」 検索で見つけたい、という目的が、ただの願望じゃなくなっていく。真翔は通知の一覧を見つめたまま、静かに息を吸った。派手さはない。でも、この反応なら続けられる。
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