エラベノベル堂

黒マント同好会対白手袋クラブ

全年齢

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4章 / 全10

黒マント同好会は、白手袋クラブの動きを探るほどに、なぜか自分たちの首をしめていった。尾行は三歩目で見つかり、暗号文は買い物メモと誤解され、潜入した会員は歓迎会で座布団を配る羽目になる。だがその失敗は、相手の目には別のものに映っていた。あれは陽動だ。あれは罠だ。あの平凡さこそ、油断を誘う高等戦術だ。そう信じた白手袋クラブは、黒の動き一つひとつに過剰な備えを重ねていく。 「向こうは侮れない」 白い手袋の代表が真顔で言うたび、会議室の空気はさらに張りつめた。実際には、黒マント同好会の主な動きは、家賃の相談と弁当の確保と、誰が次の議題を書き込むかの押しつけ合いである。それでも白手袋クラブには、古代の秘策を練る軍議に見えてしまうらしい。黒側はその反応を見て、ますます本物の強敵だと確信した。 こうして両者は、同じ日時、同じ場所で決着をつけることにした。会場は地域センターの催し場。黒マント同好会は舞台装置の入れ替えを担当し、白手袋クラブは照明と看板をいじる。黒は偽の予告状を撒き、白は紙吹雪で視界を奪う算段だった。どれも小粒だが、本人たちにとっては命がけの大作戦である。 当夜、扉が開くたびに、互いの仕掛けが少しずつずれていった。黒が裏返した看板を白がさらに入れ替え、白が用意した紙吹雪を黒の風の流れが巻き上げる。変装した会員は自分の所属を見失い、名札をつけ替えながらおろおろする。床に落ちた作戦資料は、片方が拾えばもう片方が奪い返し、気づけば互いの手で床一面に散らばっていた。 「来るぞ」 「いや、もう来ている」 「それが罠だ」 そんな声が飛び交ううちに、会場の裏手に隠していた拠点の備品まで引きずり出され、正体はあっけなく露見した。だが外から見ていた近所の人々には、ただの地域イベントにしか見えない。子ども会の飾り付けと、やたら真剣な大人たちの出し物が妙に噛み合ってしまい、最後には拍手まで起きた。 拍手を浴びた黒マント同好会と白手袋クラブは、同時に顔を伏せた。勝つはずだった夜に、残ったのは散らかった紙くずと、空になった棚と、移転先もない拠点の跡だけである。資金も名誉も失い、事実上の共倒れだった。 それでも、瓦礫のような資料の前で向かい合った二つの組織は、妙に静かだった。見栄っ張りで、不器用で、やたら本気なところまでそっくりだったからだ。 「……お前たちも、恥をかくのに慣れているんだな」 黒の誰かが言うと、白の誰かが苦笑した。 「そっちこそ。敵としては疲れるが、仲間なら悪くない」 誰からともなく、争うより合同でやったほうが楽しいのでは、という空気が生まれる。こうして黒と白はひとつになり、新しい秘密結社を名乗ることにした。名前だけは少し立派だったが、最初の議題は世界征服ではない。 「次の会議のおやつ、甘いのにするか、しょっぱいのにするかだ」 「両方じゃだめか」 「予算が足りない」 また揉め始めたのに、なぜか皆、少しだけ楽しそうだった。

4章 / 全10

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