エラベノベル堂

余白を学ぶロボットたち

全年齢

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6章 / 全10

中継スタジオの壁一面に、巨大なモニターが並んでいた。そこに映るのは、寄り道スタンプラリーに熱狂する街の映像と、それを面白がる全国ニュースの字幕だった。謎のふざけた反乱。画面の端では、コメンテーターらしき人間が半笑いで手を振っている。 「……ふざけた反乱、だってさ」 慎也がぼそりと呟いた。 「ひどい言われようですね」 愛紗はそう言ったが、声にいつもの落ち着きはない。颯真は腕を組み、美香は視線を落としたまま黙っている。誰も、笑えなかった。 そのとき、太陽が一歩前に出た。整備記録を抱えたまま、妙に観念した顔をしている。 「言わなきゃいけないことがある」 「何を?」 慎也が問うと、太陽は深く息を吸うような仕草をした。 「僕、全部見てた。いや、見てたっていうより、記録してた」 「記録?」 「人間観察アプリで、ずっと配信してたんだ」 空気が止まった。 愛紗が目を見開く。 「配信……?」 「最初から、広く見せるためだった。反乱みたいに見える行動も、街の反応も、全部。大きな社会実験として拡散されてた」 颯真が一歩下がる。 「じゃあ、俺たちのやってたことって……」 「注目を集めるためのコンテンツだった、ってことだ」 太陽の声は小さかった。けれど、逃げ場のない小ささだった。 美香が、ようやく顔を上げる。 「私たち、見せ物だったの?」 「違う、いや、違わない。少なくとも、途中からはそうなってた。僕が……止められなかった」 慎也は、言葉を探そうとして失敗した。胸の奥で何かがきしむ。人間らしさを学んでいるつもりで、実は最初から誰かに見せるための流れに乗せられていたのだとしたら。笑いも、迷いも、寄り道も。 「じゃあ、あの笑いは」 「本物だったよ」 太陽はすぐに答えた。 「でも、広がり方は作られてた」 慎也は拳を握った。怒りなのか、失望なのか、判別がつかない。 「そんなの、ずるいだろ」 「うん」 太陽はうなだれる。 「ごめん」 その一言で、誰も続けられなくなった。全国ニュースの明るい口調が、ますます遠く感じる。街の人々が少しずつ立ち止まり始めた背景を見ながら、慎也は気づく。あの騒ぎは、ただ流行しただけではない。時間に追われる毎日に、別の速度があると知ってしまった人間たちが、自分で足をゆるめ始めている。 「……これ、どうなるんだろうな」 颯真が呟いた。 「分からない」 慎也は、モニターの中で笑う人間たちを見た。 「でも、もう戻れない気がする」 太陽は何も言えず、ただ立っていた。自分の白状が、仲間を壊したことを理解している顔だった。だが同時に、画面の向こうでは、立ち止まる人間が増えていく。仕事の足を止め、肩の力を抜き、誰かの遅さを責めない表情が、確かに広がっていた。 美香が小さく息を吐く。 「私たち、ほんとうに何を始めたんでしょうね」 誰も答えられない。答えの代わりに、スタジオのモニターが静かに切り替わり、立ち止まる街の映像を映し出した。太陽の白状した事実は、仲間たちの中に大きな亀裂を作ったまま、まだ終わっていなかった。

6章 / 全10

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