エラベノベル堂

卵かけご飯論争部

全年齢

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4章 / 全10

昼休みの鐘が鳴り終わる前に、部室の空気はもう外へこぼれ出していた。公平が紙箱を抱えて廊下へ出た瞬間、奏が 「ちゃんと閉めろよ」 と小声で言い、結衣が 「そんなに急がなくても逃げないでしょ」 と返す。だが、校庭へ向かう途中で白い羽が一枚のぞいただけで、二人とも足を止めた。 中庭のベンチ近くでは、すでに数人の生徒が立ち止まっていた。誰かが 「かわいい」 と言い、誰かが 「本物?」 と目を丸くする。気づけば、人の輪はじわじわ広がり、弁論部の周りに即席の小さな広場ができていた。 「見世物じゃないんだけどな」 公平がぼやくと、紗希が肩をすくめる。 「人気者になったってことよ。議論の主役にふさわしいじゃない」 「ふさわしくないだろ」 奏がすぐ返す。だが、ニワトリは騒がれたことにも慣れたのか、箱の縁で首をかしげている。その仕草に見物人の何人かが笑った。 そこで菜々美が、ふと手を挙げた。 「ねえ、卵を産んだら本当にぜいたくなのでは?」 一瞬、周囲の空気が変わる。公平は思わず彼女を見る。 「それ、今ここで出す論題か」 「むしろ今だからでしょ」 菜々美は真顔だった。 「卵かけご飯の卵が、ただの材料じゃなくなるなら、ぜいたくって言い切れない?」 結衣が目を細める。 「高いか安いかだけじゃなくて、手に入るまでの手間まで含めて考えるべき、ってこと?」 「そうそう」 奏が腕を組む。 「でも、その卵を産ませる側の世話は誰がやるんだよ」 その一言で、見物人の笑いが少し引っ込んだ。公平は箱の中のニワトリを見下ろす。騒ぎの中心にいるのに、当の本人は落ち着かない様子で足を動かしている。華やかに見えるほど、裏では手間が要る。卵の話も、たぶん同じだ。 「討論と世話、両方だな」 公平が言った。 「片方だけじゃだめだ。人気が出たなら、なおさら責任も増える」 「じゃあ妙案を出してよ、部長」 結衣が促す。公平は少し考えてから、中庭を見回した。人は集まっている。興味を持つ目もある。なら、手伝える形に分けるしかない。 「世話の当番を決める。議論は昼休みだけ、短く区切る。見たい人には見てもらうけど、触る前に一声かける。そうすれば、討論も保護も両立できる」 紗希がぱちぱちと手を叩いた。 「いいじゃない。論点が増えたぶん、運用も工夫しないとね」 菜々美はまだ何か言いたそうだったが、ニワトリが小さく鳴いて、全員の視線がそちらへ集まる。人だかりの向こうで昼の光が揺れていた。公平は息を整え、次の言葉を探す。 「まずは、今日の分の水と居場所だ。論題はそのあとだな」

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