昼を過ぎたころ、試作七号は台所から静かに姿を消した。探しに行くと、押し入れの前でしゃがみ込み、段ボールの山をひとつずつ確かめている。動きは丁寧なのに、首を傾げるたびに髪飾りが小さく鳴って、妙に人間くさい。 「何をしてるんだ」 「自分の足りないものを探しています。昨夜、ご主人様の拾い物の中に、似た形の部品がありましたので」 そう言って差し出された箱の中には、古いラジオのつまみ、割れた眼鏡のつる、錆びたクリップ、用途のわからない金具が詰まっていた。確かにどれも似ているようで似ていない。試作七号はそのひとつひとつを並べ、見比べ、時には胸元に当てては首を振る。 「これではありません。これは机の脚には優しそうですが、私には合いません」 「机の脚に優しいって何だよ」 思わず突っ込むと、彼女は少しだけ得意そうにまぶたを細めた。どうやら調子を外した言い回しが、本人にとっては正しいらしい。そういうところも、だんだん慣れてきてしまう。 それから彼女は、俺が捨てようとしていた空の瓶を拾い、洗って、窓辺へ並べた。なぜか一本だけ逆さに置かれた瓶の中には、午後の日差しが閉じ込められたみたいに光が揺れている。 「もったいないので、花を入れます」 「花なんてあったか」 「今から作ります」 彼女は折れた割り箸を組み合わせ、紙袋の切れ端を細く裂き、いつの間にか即席の花束を作っていた。色はばらばらで、形も少し歪だ。それでも窓辺に置くと、部屋の空気がふっと柔らかくなる。 俺はその様子を見ながら、机の上に積まれた拾い物の山へ目を向けた。役に立つから集めたわけじゃない。捨てられるのが惜しかった。ただそれだけだった。だが今は、その中のひとつひとつが、彼女の手にかかると別の場所へつながっていく。 「ご主人様」 呼ばれて振り向くと、試作七号は両手で小さな端子を掲げていた。 「これ、見つけました。おそらく私の欠けていた部品です」 「なら、もう少し楽になるのか」 「たぶん。ですが、少し困ったことがあります」 「なんだよ」 彼女は端子を胸元へ押し当て、真剣な顔で言った。 「これを入れると、私は掃除より先に歌い出す可能性があります」 俺は一瞬固まり、それから吹き出した。そんな機能、どこに備わっているんだ。彼女もつられて笑い、部屋の隅で転がっていた空き缶が、その笑い声に合わせてかすかに揺れた。 外では夕方の風が吹き始めていた。片づけても片づけても増えていくのに、不思議ともう嫌ではない。むしろ、この散らかり方こそが、今日という日の形なのだと思えてくる。 試作七号は端子を大事そうに握りしめ、次に何をしようかと期待に満ちた顔で俺を見た。俺はため息をつき、それから台所の奥にある湯沸かしを指さす。 「まずはお茶にしよう。歌うのは、そのあとでいい」
拾いものメイドの恩返し
全年齢小説ID: cmnhfptzk000d01o8nt2fpp9g
