商店街の掲示板で見つけた写真は、社長が赤い腕章をつけて、子どもと老人のあいだで笑っている一枚だった。熊さんは目を丸くし、先生は黙ったまま写真の隅を指でなぞった。居酒屋の隅で偉そうにグラスを傾けていた男が、昼間はこんな顔をしていたとは思いもしない。だが次の日、二人はその答えを求めて、地域センターの扉を押した。 奥の部屋では、紙袋や折りたたみ椅子が山のように積まれ、社長が汗を光らせながら指示を飛ばしていた。見慣れた低い声がこちらを向き、あまりにあっさりした顔で言う。おう、遅かったな。熊さんが怒るより先に、社長は頭をかいた。毎晩来られなくなったのは、祭りの準備が重なったせいだという。しかも、彼はただの参加者ではなく、シニアサークルのまとめ役として、書類も買い出しも舞台の段取りも引き受けていた。 先生は呆れたように笑い、熊さんは腕組みをしたまま、今さら何を偉そうに、とぼやいた。だが二人の声には、もう怒りは残っていなかった。社長は居酒屋で見せる顔と同じくらい、ここでも頼られていたのだ。人の輪の中心に立つのが、あの男にとっては息をするのと同じことなのかもしれない。 それからというもの、二人は半ば巻き込まれるように、地域センターに顔を出すようになった。先生は配布資料の整理を任され、熊さんは力仕事で予想以上に重宝された。社長は相変わらず仕切りたがったが、三人で動くと不思議と話が早い。準備帰りに寄る居酒屋では、空席はもう気にならない。むしろ、次の催しをどう面白くするかで、毎夜の笑い声が増えていった。 名前も知らないまま始まった関係は、いつしか互いの足りないところを埋め合うようになっていた。酒の席だけの仲ではない。明日の段取りまで語り合える仲だ。社長が締めくくりのように言った。まだまだこれからだな。熊さんと先生は、少し遅れてうなずいた。その夜、三人の笑い声は店の外の路地までこぼれ、静かな街をやわらかく揺らしていた。
居酒屋帰りの三人組
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