エラベノベル堂

居酒屋帰りの三人組

全年齢

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5章 / 全10

商店街を抜けたころには、通りの影が少し長く伸びていた。先生は歩きながら、何度も同じ息を吐く。親方も黙っていたが、足取りは迷いがなかった。 「公民館、って言ってたな」 さっき角の雑貨屋で聞いた一言が、まだ耳に残っている。社長らしき男が最近、あそこへ出入りしているらしいと。先生はそこで初めて、胸の内にあったもやが形になるのを感じた。 「情報があるだけで、ここまで違うとはな」 「違いすぎて腹が立つ。店で飲んでるだけの顔しか知らなかったのに、外じゃ別の場所を持ってやがる」 親方はそう言って、苦く笑った。だが笑い切れない。公民館の前に立つと、二人とも自然に口数が減った。白い壁は夕方の光を吸って、どこか無機質に見える。それなのに、扉の向こうからは人の気配がかすかに漏れていた。 「いるのか」 「いるんだろうな」 先生がそう答えたものの、指先はわずかに冷えていた。社長が何をしているのか、その答えがこの中にある。それは分かっているのに、確かめるとなると、妙に足が重い。 「怖いか」 親方が横目で見る。 「怖いってほどじゃない。だが、今さら別人でした、で済む気もしない」 「済まねえな。済むなら、こんなに探し回ってねえ」 二人は同時に扉の前で立ち止まった。中に入れば、今までの社長のイメージが何かしら壊れるかもしれない。いつもの居酒屋での、文句ばかり言う顔。だが、商店街で聞いた、段取り上手な顔。そのどちらが本当なのか、あるいはどちらも本当なのか。 先生は拳をほどき、扉の取っ手を見つめた。 「確かめるしかないな」 「だな。見てから驚くか、見ずに悩むかなら、見て驚くほうがまだましだ」 親方がそう言うと、先生も小さく頷いた。不安は消えない。それでも、ここで引き返せば、明日もまた同じ胸騒ぎを抱えたままだ。二人の視線が、同じ一点に集まる。 「行くぞ」 「ああ」 先生は扉に手をかけた。中から流れてくるかすかな人声が、夕暮れの空気に溶ける。社長が何をしているのか、その答えを知る覚悟だけを胸に、二人は静かに中をうかがえる位置へ身を寄せた。

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