「警戒されてる、か」 野田が苦笑した。金色の袖をそっと見下ろし、肩をすくめる。 「そんなつもりじゃないんだがなあ」 「気持ちは分かるよ」 佐伯が、会場の片隅で困っていた子どもの靴ひもに目を留めた。しゃがみ込むと、慣れた手つきで結び直す。 「派手なのは、後からでもいい。まずは困りごとを拾うほうが先だろう」 その言葉に、早川がうなずいた。 「受付の列も少し詰まっているわ。案内板が見えにくいのかしら」 「なら、わしが動く」 榊原は会場の椅子の脚を見て、ぐらつきを確かめると、さっと座面を押さえた。 「子どもが使うなら、倒れそうなものは早めに直したほうがいい」 三浦はそれを見て、顎を引く。 「よし。目立つことより、先に手を出せ。わしらの出番はそこだ」 五人は言葉を交わしながら、あちこちに散った。派手な名乗りも、誇らしいポーズもいらない。ただ、目の前の小さな不便を一つずつ片づけていく。ほどけた靴ひも、見にくい案内、少し重い机、迷って立ち止まる人。誰かが気づけば、誰かがすぐ動く。 やがて、さっきまで遠巻きにしていた子どもが、ぽつりと声を出した。 「さっきの、ありがとう」 その一言に、五人の背筋がそろって伸びる。 「おう、どういたしまして」 野田がいつもの調子で返すと、今度は子どもが少し笑った。 会場の空気は、最初のぎこちない冷たさを失っていた。華やかな色が目を引かなくなった代わりに、手際のよさと気安さが、人を近づけてくる。 イベントが終わるころ、主催の年配者が五人のもとへ来た。 「派手じゃないのに、助かったわ。ああいうのが一番ありがたいのよ」 「ありがたい、か」 三浦はその言葉をゆっくり噛みしめた。 榊原が腕を組む。 「目立てばいいと思っていたが、違うんだな」 「ええ」 早川が微笑む。 「近づきやすいほうが、手を貸しやすいもの」 野田はしばらく黙っていたが、やがて金色の襟元を指でつまんだ。 「なら、少し変えるか」 「変える?」 「もっと親しみやすくする。派手さは残してもいいが、前に出しすぎない。見せるためじゃなく、頼ってもらうための色にするんだ」 三浦が短くうなずいた。 「それでいこう。わしらは見世物ではない。困ったときに呼ばれる存在だ」 五人は顔を見合わせ、今度は大きく笑わなかった。けれど、その静かな表情には、最初のころよりずっと確かな手応えがあった。
町を守る五人組
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