「見世物ではない、か」 野田が低く繰り返した。金色の襟元を指先で整えながら、いつもの大きな身振りを少しだけ抑える。 公民館の広間には、さっきまでの賑わいがまだ薄く残っていた。机を片づける音、椅子を戻す音、そのあいだから、誰かが携帯端末をいじる小さな音が聞こえる。そこへ、会場の外にいた若い職員が遠慮がちに近づいてきた。 「すみません、ちょっとだけお話を……」 五人は揃って振り向いた。 「なんだい、改まって」 早川がやわらかく笑う。 職員は目線を泳がせながら、手元の端末を見せた。 「さっきの様子、写真に撮っていいですかって、聞かれていて。テレビの人も、近いうちに取材したいかもしれないって」 一瞬、空気が止まる。 「テレビ?」 榊原が眉を上げた。 「わしらをか」 「それと、町の掲示板や、ネットでも話題になるかもしれないそうです」 三浦は黙って腕を組んだ。嬉しいはずなのに、胸の奥がひっかかる。目立つ色、年寄りの集まり、奇妙な活動。話題になる理由が、それだけで終わる気がしたのだ。 案の定、職員が苦笑する。 「ただ、その、面白がる感じの反応もあるみたいで……。年齢とか、見た目とか」 「ふむ」 佐伯が静かに息を吐いた。 「元気な高齢者、で片づけられるのは、少し寂しいね」 野田は黙っていたが、やがてゆっくり言った。 「なら、話してやるしかないな。わしらが何者かを」 「何者か、か」 三浦が目を細める。 「ただの珍しさじゃない。わしらは、ずっと働いてきた。教える側だった者もいれば、看る側だった者もいる。家を支え、店を回し、町を見てきた。年を取ったから動けないんじゃない。動き方を知っているだけだ」 早川がうなずいた。 「病院では、急ぐより先に落ち着かせることが大切だったわ。人は安心すると、ちゃんと前を向けるもの」 榊原が腕を組んだまま言う。 「木も人も、すぐには言うことを聞かない。だからこそ、様子を見る。壊れたところだけを直すんじゃなく、長く持つように手を入れる。そういう仕事をしてきた」 佐伯は笑みを浮かべた。 「私は長く店に立っていたよ。客の顔を見れば、何を欲しがっているかはだいたい分かる。派手な声より、先回りの気づかいのほうが役に立つこともある」 最後に野田が胸を張る。 「商売人は、にぎやかさだけじゃ食っていけない。人が来やすい空気を作る。困った顔を見たら、まず声をかける。そういう積み重ねが、町を回してきたんだ」 職員は少し驚いた顔で、何度もうなずいた。 「なるほど……」 三浦は端末の黒い画面を見つめたまま、静かに言う。 「だから、もし取り上げられるなら、色が派手だとか、年寄りが何をやっているとか、その先を見せたいな。困っている人に手を貸すことが、どれだけ自然なことかを」 「そうだねえ」 早川が微笑む。 「珍しさは入口でいい。中身まで見てもらわないと」 野田はその言葉に、珍しく肩の力を抜いた。 「よし。なら、変に飾る必要はない。わしらの言葉で話そうじゃないか」 誰かが笑い、誰かがうなずく。そのとき、端末の画面に小さく通知が灯った。取材の打診らしい短い文面を見て、五人はまた顔を見合わせる。 「来るかもしれんぞ」 三浦が言う。 「面白がられるのは、覚悟のうちだ」 「なら、受けて立つまでよ」 野田が笑い、金色の袖口を軽く鳴らした。
町を守る五人組
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