エラベノベル堂

町を守る五人組

全年齢

小説ID: cmnhipaa5000d01mz9wdahm82

4章 / 全10

だが、翌朝になると空気が少し変わった。商店街の掲示板に、色鮮やかなチラシが貼られていたのだ。町の話題を集める特集で、五人の活動が取り上げられるらしい。さらに若い記者が会館に現れ、写真を撮らせてほしいと頭を下げた。悪い話ではないはずなのに、五人はどこか落ち着かなかった。年寄りなのに元気だとか、いくつになっても恥ずかしがらないとか、そんな見出しが先に立つ気がしたからだ。 案の定、取材が始まると記者の目は白い腕章や皺の深い顔ばかり追った。どうして今さら動こうと思ったのか、何が面白くて戦隊など名乗るのか。聞かれた美代子は、少しだけ笑ってから、若い頃に病院で働いていた話をした。人は見た目だけではわからないことが多い。強がっている人ほど、誰かの一言で救われることがある。私はそういう場面を何度も見た、と。 久志は工場で事故が起きた日のことを語った。大きな音のあと、皆が慌てる中で、最初に必要だったのは力自慢ではなく、落ち着いて声を掛ける人間だったと。達夫は配送の仕事で、近道を知るだけでは足りず、道を塞ぐ雨や渋滞より先に人の気持ちを読むほうが大事だったと話した。昭男は壊れた戸を直すたび、物は使う人の暮らしに合わせてこそ生きると学んだと言い、和彦は顔を覚えるだけの商売ではなく、名前を呼び合うことで店が町になるのだと静かに続けた。 記者は次第にペンを止め、五人の言葉に耳を傾けた。珍しさを面白がるための取材だったはずが、いつの間にか表情が真剣になっている。最後に美代子は、白い腕章を見せながら言った。白は目立つためじゃない。誰の色とも混ざれて、困っている人のそばに一番近く寄れる色だと。 その午後、記事は出なかった。代わりに記者は、写真よりも言葉のほうが大事だと頭を下げて帰っていった。夕方、掲示板の前に立った五人は、少し拍子抜けした顔で顔を見合わせた。だが、胸の奥には妙な安堵があった。面白がられるだけなら、きっと長くは続かない。けれど自分たちの歩いてきた道を、誰かがきちんと見ようとしてくれた。その事実だけで、次の一歩はずっと軽かった。風の強い商店街で、美代子の白だけがやわらかく揺れていた。

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