エラベノベル堂

町を守る五人組

全年齢

小説ID: cmnhipaa5000d01mz9wdahm82

5章 / 全10

「受けて立つまでよ」 野田が笑った直後だった。公民館の片隅にいた年配の女性が、そっと咳払いをする。 「あのねえ、野田さん」 「ん?」 「言いにくいんだけど……金色の人って、ちょっと怖いのよ」 その一言に、空気がふっと止まった。 野田は目を丸くし、次の瞬間にはいつもの調子で笑おうとしたが、笑い切れない。早川が小さく息をのむ。 「怖い、ですか」 「だって、前に出てくるでしょう。声も大きいし、なんだか全部仕切られそうで」 女性は困ったように視線を落とした。けれど、悪意というより、戸惑いに近かった。 三浦は腕を組み直す。 「なるほど。派手さが、親切より先に立ってしまったか」 佐伯がうなずく。 「目立つ人ほど、近寄る前に身構えられるものね」 野田はしばらく黙っていた。金色の襟元をつまみ、少しだけ引っぱる。 「怖い、か。そりゃまあ、好きで威張ってるわけじゃないんだがな」 「分かってるわよ」 女性は慌てて手を振った。 「でも、ほら……あの色って、やたらに目立つじゃない。何を考えてるのか分からなくて」 榊原が低く笑う。 「何を考えてるか、か。だいたいは、人が困ってないか見てるだけだぞ」 「そうだねえ」 早川が柔らかく続けた。 「大きな声を出すのは、相手を驚かせたいからじゃないの。埋もれないように、呼びかけるためなのよ」 三浦は女性に向き直る。 「わしらは町で長く暮らしてきた。派手に見える役目も、静かに支える役目も、どちらも中身は同じだ。相手の困りごとを見つけて、手を貸すこと。それだけだよ」 野田はうなずき、少し照れたように肩をすくめた。 「怖がらせるつもりはない。むしろ、近づきやすくしたいと思ってたんだがなあ」 「なら、なおさらよ」 女性は少しだけ笑った。 「金色さん、ちゃんと挨拶してくれるし、道を開けるだけじゃなくて荷物も持ってくれるでしょう。見た目が派手でも、やることは地味で優しいって、まだ皆に伝わってないのよ」 その言葉に、野田の眉がぴくりと動く。 「……地味で優しい、か」 「ええ」 佐伯が、ふっと目を細めた。 「それは悪くない褒め方だね」 三浦も口元を緩める。 「派手さの裏が見えれば、印象は変わる。なら、ひとつずつやるしかないな」 「一度に変えようとしないことよ」 早川が言った。 「人の誤解って、丁寧にほどくしかないもの」 野田は金色の袖をきゅっと整えた。 「よし。じゃあ、次に会ったやつには、もっと先に礼を言う。でかい声は少し控える。怖いと言われるのは、さすがに本意じゃないからな」 榊原が鼻で笑う。 「お前にしては、ずいぶん殊勝だ」 「金色だって、柔らかくなるさ」 そう言ってから、野田は少しだけ真顔になった。 「だが、派手でいることまでやめるつもりはない。目立つのは、呼ばれたときにすぐ見つけてもらうためだ。そこだけは譲れん」 三浦は満足そうにうなずく。 「それでいい。見つけてもらうための色なら、誠実でなければ意味がない」 公民館の外では、夕方の風がゆっくりと枝を揺らしていた。五人は並んで立ち、誰からともなく小さく息をつく。誤解はまだ残る。だが、ほどけ始めた手応えは確かだった。野田の金色は、ただ眩しいだけの色ではない。少しずつ、人の心に届く形へ変わり始めている。

5章 / 全10

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