応援の声は、少しずつ町のあちこちで聞こえるようになった。商店街では、五人が来ると安心すると言う者が増え、公園では子どもたちが腕章の色を競うように呼びかけた。だが、その一方で妙な噂も広がった。白の美代子だけが気難しいらしい、上品に見えるぶん近寄りがたい、派手な役割の裏で一番扱いにくいのはあの人だ、と。本人は笑って受け流していたが、久志は黙っていられなかった。 会館に五人が集まった夜、久志は机を叩かずに手を置いたまま言った。誤解は放っておくと形になる。なら、形になる前にほどこう。達夫は頷き、誰がどこで何を見たかを順に拾おうと提案した。和彦は噂の出どころを辿り、昭男は会館の掲示板に手書きで活動記録を貼り出した。美代子は、自分から町へ出る回数を増やした。挨拶だけでは足りない。困っている人の隣に立ち、買い物袋を持ち、雨の日は傘を差し、話を聞く。それを続けるしかない。 数日後、商店街で小さな騒ぎが起きた。足を滑らせた老人を支えた美代子に、たまたま居合わせた若者が冷ややかな視線を向けたのだが、老人がすぐに笑って言った。あんた、見た目で決めつけるのは早いよ。この人は誰より先に私の荷物を持ってくれる。そこへ和彦が名前を呼び、久志が人を集め、達夫が安全な通り道を開け、昭男が折れた杖をその場で直した。五人の動きは派手ではない。それでも、誰かが困った瞬間に自然と手が伸びるのを見て、周囲の顔つきが変わっていった。 その日、若い母親のひとりがぽつりと呟いた。白の人、近寄りがたいどころか、一番気を配ってくれるんですね。美代子は少しだけ目を細めた。派手さの裏にあるのは、見栄でも誇りでもなく、ただの習慣だった。誰かの困りごとに気づいたら、黙って背中を押す。それを積み重ねてきた年月が、ようやく町に届き始めたのだ。 夕暮れ、会館へ戻る五人の背中を、いつの間にか何人もの住民が見送っていた。白い腕章はもう浮いていなかった。むしろ、みんなの視線をつなぐ穏やかな目印になっていた。美代子はふと立ち止まり、振り返って笑った。あら、私だけ扱いづらいんじゃなかったの。すると久志が、だからこそ目立つんだろうと照れたように答えた。町は笑いに包まれたが、その先で誰も気づかなかった。会館の窓辺に置かれた活動記録の束の一番上に、白い紙で包まれた手紙が一通、いつの間にか混ざっていたことを。
町を守る五人組
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