エラベノベル堂

町を守る五人組

全年齢

小説ID: cmnhipaa5000d01mz9wdahm82

6章 / 全10

町の広場では、秋の地域イベントに向けた準備が始まっていた。五人は手分けして飾り付けや案内板の配置を相談したが、そこで早くも意見が割れた。久志は来場者の目を引くようにと大きな横断幕を主張し、達夫は動線を優先して通路を広く取るべきだと言う。昭男は壊れやすい仮設台の補強を先に済ませたいと譲らず、和彦は顔見知りを増やすために受付を中心に回したいと考えた。美代子は全体をまとめようとしたが、白の腕章まで派手に飾ろうとする案が出た瞬間、思わず声が強くなった。目立つことが大事なんじゃない、来た人が困らないことが先でしょう、と。 空気がぴんと張りつめた。久志は黙り、達夫は眉を寄せた。誰も間違ってはいないのに、誰も引けなかった。そこへ、広場の片隅で段ボール箱を抱えた中学生が足を止めた。重さに耐えきれず箱を傾けた拍子に、中身の紙皿が風に散ったのだ。五人は一斉に動いた。昭男が即座に台車を持ってきて、和彦は周囲の人に声をかけて紙皿を拾い集める。達夫は風の通り道を見て、飛ばされにくい位置へ案内板をずらした。久志は誰より大きな声で人を集めたが、命じる調子ではなく、手伝ってくれと頼む声だった。 美代子はその様子を見ながら、はっとした。自分たちは一つの形に揃う必要などなかったのだ。無理に誰かが前へ出れば、ほかの得意が見えなくなる。派手な役は派手な役で、地味な役は地味な役で、必要な場面がある。白は皆の間をつなぐ色であって、ひとりだけ浮くための色ではない。そう口にすると、久志はゆっくりうなずいた。見せ場を作ることばかり考えていた、と。 結局、案内板は達夫の提案で低い位置に移され、受付は和彦の笑顔でやわらぎ、飾りは子どもたちが描いた花で埋まった。久志の横断幕は入口ではなく会場の奥に張られ、来た人が帰り道で初めて目にするように工夫された。昭男は最後まで足場を確かめ、美代子は困っている人のそばを回った。すると、広場全体がひとつの呼吸を始めたように落ち着いた。 イベント当日、住民たちは口々に言った。派手じゃないのに、なんだか安心する。若い人も年寄りも、入りやすい。美代子は笑い、白い腕章をそっと整えた。まもなく、受付台の下から見つかった一通の手紙が久志の手に渡る。差出人の名は、かつて白の役を煙たがった若い母親だった。そこには、あの色が一番やさしかったと書かれていた。五人は顔を見合わせ、次の準備へ向かった。今度は、誰も無理に目立とうとはしなかった。

6章 / 全10

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