エラベノベル堂

町を守る五人組

全年齢

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7章 / 全10

公民館の廊下で、五人はイベント会場へ向かう来客の列を見送っていた。まだ午前の熱が残る空気の中、野田だけが妙に背筋を伸ばしている。 「さあ、今日は気合いを見せるぞ」 「また張り切ってるねえ」 佐伯が笑った、そのときだった。 通りがかった若い男が、五人をひと目見て鼻で笑う。 「本気でやってるのかよ。年寄りの余興にしては派手すぎだろ」 空気が、すっと冷えた。榊原の眉がぴくりと動く。早川も口元をきゅっと結ぶ。三浦は何も言わず、相手の足元と持ち物、そして周囲の混み具合を一瞬で見た。 「余興、か」 野田の声が低くなる。だが次の瞬間、三浦がさらりと割って入った。 「そう見えるなら、見せ方がまだまだだな」 男が怪訝そうに振り返る。 「は?」 「わしらは年寄りだ。否定はせん。だが、年齢で仕事の価値まで決まると思うのは早計だぞ」 三浦はそう言って、床に置かれかけていた荷物を見つけると、男が蹴りそうになっていた位置からさっとずらした。 「ほら、足元が悪い。急いでいるなら、まずつまずかんことだ」 男は言葉を失う。榊原が続けて、会場の端で傾いていた簡易看板をあっという間に支えた。 「若いかどうかより、先に気づくかどうかだ」 「その点は、こっちのほうが得意なの」 早川が迷子になりかけた子どもに目を配りながら、軽く手を挙げた。 佐伯は笑みを浮かべ、配布物の束を整えつつ言う。 「大きな声より先に、困ってる顔が見えるほうが強いものよ」 男は気まずそうに視線を逸らした。だが、その背後で小さな悲鳴が上がる。テントの留め具が外れ、飾りの一部がぐらりと傾いたのだ。 「危ない!」 誰より早く動いたのは、さっきまで笑われていた五人だった。 野田が前へ出て、人の流れを止める。榊原が支柱を押さえ、三浦が周囲へ短く指示を飛ばす。早川と佐伯は逃げ遅れそうな人をそっと外へ誘導した。 慌ただしさの中で、野田が思わず言う。 「ほら見ろ、年寄りを甘く見ると、驚くぞ」 その言い方が妙に可笑しかったのか、近くで見ていた子どもがくすりと笑った。 「おじいちゃん、戦隊みたい」 「戦隊、か」 佐伯が肩を揺らす。 「失敗したと思ったら、笑いに変えるほうが勝ちね」 三浦も口元を緩めた。 「年の功ってのは、焦っても慌てないことだ。失敗のあとでどう動くかが、本当の腕前だからな」 さっきの男は、気まずそうに頭を下げた。 「……すみませんでした」 野田は少しだけ間を置いてから、明るく笑う。 「いいさ。見くびられるのは慣れてる。だが、次は足元を見ろよ」 その一言に、周囲から小さな笑いが起きた。さっきまで張りつめていた空気が、少しずつほどけていく。失敗は消えない。けれど、慌てず、怒鳴らず、笑いに変えてしまうそのやり方が、人の表情を変えていった。 五人は顔を見合わせる。 「……悪くないな」 榊原がぼそりと言う。 「ええ」 早川がやわらかく答える。 「笑ってもらえたら、次は話しかけやすくなるもの」 野田は金色の袖を払って、ひとつ深く息をついた。 「年齢を理由に軽く見られても、こっちは経験で返せる。しかも、笑わせながらな」 その言葉に、三浦が短くうなずく。会場の空気はもう、最初の冷たさではなかった。笑い混じりの視線が、五人の周りにゆるやかに集まり始めている。

7章 / 全10

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