秋のイベントが終わってからというもの、町の空気は少しやわらいだ。だが五人の胸には、まだ消えないざらつきがあった。広場で若い客に言われた、年寄りのくせに目立とうとしている、という一言だ。笑って受け流したつもりでも、夜になると耳の奥で何度も響いた。 その週の朝、商店街の入口でひと騒ぎが起きた。配達車が曲がりきれず、歩道に積まれた祭り用の資材に軽く触れてしまったのだ。人だかりができ、若い運転手は青ざめ、周囲には年を取ると判断が鈍ると囁く声まで混じった。久志は顔を硬くしたが、怒鳴れば空気がさらに悪くなると悟った。代わりに深く息を吸い、静かに車輪の向きを示した。達夫は地面の傾きを見て進路を描き、昭男は壊れかけた箱をその場で補強した。和彦は見物人に離れるよう声をかけ、美代子は運転手の肩を軽く叩いて、次からはここで角度を切ればいいと笑った。 その一連の動きが終わると、誰かが拍手をした。最初は一人、次に二人、やがて周囲が小さく笑い出した。久志が低い声で、派手な転倒劇じゃなくてすまんねと言うと、子どもが一番喜んで、転ばなくてよかったと答えた。運転手も頭を下げ、五人に助けられて恥をかかずに済んだと涙ぐんだ。 だが、本当の転機はそのあとだった。騒ぎの最中、久志が自分の手帳を落としていたのだ。和彦が拾い上げると、ページの間から古いメモが一枚はらりとこぼれた。そこには、誰も知らないはずの名前と、町の外れにある空き倉庫の住所が書かれていた。達夫が眉を上げる。こんな場所、今まで話題に上ったことがない。 五人は顔を見合わせ、その足で倉庫へ向かった。扉は錆びついていたが、昭男が簡単な道具で留め具を外すと、中には整然と並べられた段ボール箱があった。箱の表には、寄付の食品や日用品の文字。だが、さらに奥には、古い旗や腕章、手作りの札まで押し込まれている。よく見ると、どれも五人の活動を陰で支えた人々からの品だった。 美代子が箱を開けた瞬間、白い紙がふわりと舞った。そこには、町の誰かが書いた短い文があった。五人のやり方は派手じゃない。でも、転びそうなときに必ず手がある。見ていて安心する。 久志はしばらく黙っていたが、やがて笑い声をこぼした。こんなもの、もっと早く見せてくれればよかったのに。和彦もつられて笑い、達夫は倉庫の天井を見上げた。外では、先ほどの騒ぎを聞きつけた住民たちが集まり始めている。美代子は白い腕章をそっと整え、さて、ここからは見せ場じゃなくて片付けね、と言った。 すると、周囲の人々が一斉に動き出した。誰かは箱を運び、誰かは札を分け、若い母親たちは紙束を押さえ、子どもたちは楽しそうにテープを持って走る。さっきまで年齢を笑っていた声はもうない。代わりに、いつものありがとうが飛び交っていた。 その夜、商店街の掲示板に一枚の手書きの紙が貼られた。町の倉庫整理を手伝った五人へ。失敗を笑いに変えられる人は、町を守る人だ。見慣れた丸文字に、五人は思わず顔を見合わせた。年を重ねたことは、弱さではなかった。転んでも立ち上がるたび、町のほうが少しだけ、彼らの色に染まっていく。
町を守る五人組
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