祭りの後片付けが終わっても、美代子の胸には小さな引っかかりが残っていた。白の役は町に近づくための色だと、何度言い聞かせても、最近はどうにも浮いている気がしたのだ。受付で笑えば上品すぎると言われ、荷物を持てば気を遣いすぎだとからかわれる。役に立っていないわけではない。それでも、誰かの目にどう映るかばかりが気になってしまう。 そんな折、町内会館に一枚の案内が届いた。地域交流の催しで、五人の活動紹介をしてほしいという。ところが久志は、白だけが前に出るのは違うと言い、達夫は説明役を減らして導線を作るべきだと譲らなかった。昭男も和彦も、美代子の良さは見ている者にしか伝わらないと口をそろえたが、肝心の本人は首を横に振った。私は別の形で手伝う。派手な役じゃなくていい、と。 その言葉のまま、美代子は紹介役を外れ、裏方に回った。会場の隅でお茶を配り、迷った人に道を教え、舞台袖で次の出番を整える。だが、不思議なことに、誰にも届いていない気がした。和彦が声をかけても、客は赤や青の話ばかりで、白の気配には目を向けない。久志は歯がゆそうに眉を寄せ、これでは美代子の良さが埋もれるとつぶやいた。 そこで五人は、急きょ舞台を一つ増やした。派手な実演ではない。町の人が持ち込んだ品を、美代子が一つずつ手に取り、その持ち主との思い出を短く受け取っていく小さな場だ。壊れた傘、擦り切れた通学かばん、色褪せた手紙。どれも、誰かにとっては取るに足らない物に見える。だが美代子は、品物に触れるたび、持ち主の暮らしを言葉にして返した。これを直した日は雨がやさしかったでしょう、これは毎朝の支えだったんですね、と。 最初は物珍しさで集まっていた人々が、次第に息を潜めた。語り口は静かなのに、聞いているうちに自分の記憶までほどけていく。若い母親が目を潤ませ、商店主がうなずき、子どもが祖父の帽子を見上げた。気づけば会場は、拍手ではなく深い沈黙に包まれていた。そこへ久志が舞台へ上がり、はっきりした声で言った。白は目立つための色じゃない。人の心を受け止めるための色だ。見せ場は派手でも、信頼は静かなところで育つ。 美代子は、ようやく自分の立つ場所を知った気がした。前に出ることだけが役目ではない。見えにくい場所で、誰かの思いを受け取り、次へ渡すこともまた、同じくらい大切なのだ。 催しが終わる頃、机の上に置かれた白い札の裏に、いつの間にか新しい文字が増えていた。そこには、町の誰かが小さく書き足していた。白があるから、みんなが安心して色を出せる。美代子はそれを読み、はじめて笑った。目立たないはずの役が、実は一番遠くまで届いていたのだ。
町を守る五人組
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