「次は足元を見ろよ」 野田の一言に、周囲からまだ細い笑いが残っていた。だが、その笑いの輪の中心で、当の野田だけが少しだけ表情を曇らせる。 片づけの手伝いに戻ろうとしたとき、会場の端で 「野田さん、ちょっと」 と声がかかった。呼び止めたのは、さっきまで準備をしていた女性だった。彼女は気まずそうに手を合わせる。 「悪いんだけどね、さっきのことがあって、金色の人が前に立つと、また空気が張るのよ。威張ってるわけじゃないのは分かるんだけど、どうも目が行きすぎるの」 野田は足を止めた。 「また、か」 「ええ。あなたが悪いというより、見た目が強いのよ」 言葉は柔らかいのに、刺さりはした。野田は笑おうとして、うまくいかない。 「じゃあ、わしは何をすればいい」 女性は少し困った顔をして、視線を落とす。 「そこなの。手伝ってもらえるのはありがたいの。でも、前に出ると、みんなが構えてしまうから」 その一言で、野田の胸の中がすっと冷えた。役に立ちたいと思って動いているのに、前に出るほど距離が生まれる。彼は金色の袖を握りしめ、苦笑する。 「なるほどな。便利なはずの色が、邪魔をしてるわけか」 三浦がその横顔を見て、低く息を吐いた。 「野田、気にするなと言っても無理だろうが、今は引くのも仕事だ」 「引く?」 「そうだ。目立つ役目から外れたいと思うなら、それを否定はせん。だが、お前の良さまで消す必要はない」 早川がうなずく。 「派手さ以外にも、野田さんにはあるでしょう。声の通りやすさ、場をほぐす速さ、人を集める勘。あれを別の形で見せればいいの」 佐伯も、笑みを浮かべながら続けた。 「前に立たなくても、伝わるやり方はあるわ。言葉だけじゃなく、見え方を変えればいい」 榊原は会場の隅に置かれた簡易台を見て、手のひらで軽く叩いた。 「舞台を作ればいい。真正面じゃなくても、横からなら見えるだろう」 「舞台?」 野田が顔を上げる。 三浦はゆっくりとうなずいた。 「お前が無理に前へ出なくても、良さが伝わる場所を用意する。そこでなら、派手さではなく、いつもの気配りが見えるはずだ」 五人は短く目を合わせた。さっきまでの冷やかしとは違う、静かな決意がそこにあった。 野田はしばらく黙ってから、そっと襷を直す。 「……わしの良さ、か。自分じゃ分からんな」 「だから、仲間がいるんでしょう」 早川の言葉に、野田は小さく笑った。 「なら、任せる。わしは、前に出なくてもできることをやるさ」 その場で榊原が簡易台の位置を少しずらし、佐伯が通りやすい導線を考え、三浦が全体の流れを見てうなずく。野田は一歩下がったまま、呼びかけの声を整えた。 不思議なことに、いつもの金色よりも、その姿のほうがずっと自然に見えた。
町を守る五人組
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