写真の正体を知りたいと思ったぼくは、放課後になると、真っ先に図書館へ向かった。あの古いアルバムの一枚が頭から離れない。暗がりに立つ誰かの輪郭。あれは偶然なのか、それとも何かを写したのか。考えれば考えるほど、胸の奥で好奇心が膨らんでいった。 ぼくは友だちの真央を誘った。真央は少し呆れた顔をしながらも、面白そうだね、と言ってくれた。二人で机を広げ、古い写真に似た雰囲気を作ることにした。まずは背景だ。図工室から借りた黒い布を窓際に張り、夕方の光が斜めに入るように角度を調整する。次に小道具として、使い古した傘、割れたように見える白い紙、古びた教科書、そしてぼくが家から持ってきた銀色の缶を並べた。どれも、見慣れたものなのに置き方ひとつで知らない場所みたいに変わって見えた。 真央はスマホを構え、ぼくは布の影に立った。アルバムの写真では、暗いすみの存在がいちばん気になったから、同じように端へ寄ってみる。だが、ただ立つだけでは足りない。影が不自然に伸びるよう、足元に小さな鏡を置いたり、窓を少しだけ開けて風を入れたりした。髪が揺れ、布がかすかに波打つたび、写真の空気に少しずつ近づいていく気がした。 けれど、撮った画像はどれも違った。暗くしても、影を重ねても、あの写真の持つ妙な静けさが出ない。むしろ作れば作るほど、ぼくらの周りの音が薄くなるようだった。真央が笑っているのに、笑い声だけが遠い。机の上の消しゴムが、いつのまにか一つ増えている。さっき置いたはずの缶が、少しだけ位置を変えている。ぼくは背中に小さな寒気を覚えた。 最後に、ぼくはアルバムの写真を机の上に置き、真央にそっと重ねてもらった。輪郭をまねるには、ただ形を寄せるだけじゃだめだ。そこにあるはずのない気配まで、写りこませなければならない気がした。真央がシャッターを押した瞬間、窓の外で風が止まり、布の影だけが一拍遅れて揺れた。画面の中には、さっきまでなかった細い白い筋が、端からすっと伸びていた。 ぼくと真央は顔を見合わせた。似た写真を作ろうとしただけなのに、何か別のものに近づいてしまった気がした。
図書館の心霊写真
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