エラベノベル堂

図書館の心霊写真

全年齢

小説ID: cmnhjqti9001t01mzyazudr6l

3章 / 全10

次の日も、ぼくは真央と図書館の一角に机を並べた。昨日の写真を見れば見るほど、あの白い筋は偶然とは思えない。だけど、怖さより先に、確かめたい気持ちが勝ってしまう。今度はもっと本物らしくしようと、古い紙を探し、机の端に黄ばんだ便せんを置き、背景も少し暗くした。真央は 「もう十分こわいよ」 と言いながら、窓の角度を細かく調整してくれた。 シャッターを切るたび、画面には思ったとおりの写真は映らなかった。暗がりは不自然に濃くなり、ぼくらの影は半歩ずれて見える。けれど、その失敗の中に、妙に目を引くものが混じった。机の脚のあたりに、細く折れた線のような影が落ちている。誰かの指先みたいにも、枝みたいにも見えるのに、どこにも元になる物はない。さらに画面の端には、細かなざらつきが走り、古い写真特有の粒の荒さまで出ていた。 「これ、加工してないよね」 真央が小さく言った。 ぼくは首を振った。むしろ、何もしていないのに、写真だけが古くなっていくみたいだった。現実の机の上には何もないのに、撮った画像の中では、便せんの角がわずかに折れ、黒い布の端に見覚えのないゆらぎが重なっている。まるで、見えない誰かがそっとそこに手を置いたあとみたいだ。 気味の悪さはあったのに、目は離せなかった。ぼくはアルバムの写真をもう一度取り出し、新しく撮れた一枚と見比べた。すると、右端の暗がりに、今の写真と同じような細い影があった。偶然にしては、あまりに似すぎている。しかも、ぼくたちが並べた小道具の位置まで、なぜか古い写真の並びと重なり始めていた。 そのとき、真央がふっと息をのんだ。机の上の鉛筆立てが、誰も触れていないのに一回だけ揺れたのだ。ぼくは咄嗟に振り向いたが、そこには誰もいない。ただ、窓から入る光のすじの中に、薄い埃がゆっくり沈んでいくのが見えた。 再現は失敗しているはずだった。なのに、失敗した写真ほど、本物の古写真みたいに見えてしまう。ぼくは胸の奥で、何かに少し近づいてしまったと感じた。

3章 / 全10

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