翌日、ぼくと真央は図書館の奥にある校内資料の棚を引っ張り出した。古い年度誌、卒業名簿、寄贈されたまま眠っていた文集。紙はどれも乾いた匂いがして、ページをめくるたびに細かな埃が光った。アルバムの写真に写っていた校庭の隅を手がかりに、同じ時代の記録を探していくと、ひとつの年だけ妙に記述が多かった。そこには、秋の終わりに校庭の藤棚が倒れかけ、三年生の女子が転んで手首を痛めたこと、翌日に先生と用務員が手入れをしたこと、そしてその場にいた数人の名前が残されていた。 ぼくは名簿の中から、その女子の名前を見つけた。結衣という名前だった。さらに文集を開くと、放課後の写真を集めた小さなページがあり、運動場の片隅に立つ二人の姿が写っていた。一人は結衣でもう一人は当時の写真係だったらしい。説明文には、藤棚の前で撮る約束をしていたのに、直前に誰かが呼びに来て、片方だけが残ったと書かれていた。 真央が、これってさ、と小さく言った。写真の暗い端に立っていたのは、誰かを待っていた人なんじゃないかな。 その言葉で、古い一枚が少し違って見えた。暗がりは恐ろしいものではなく、約束を持て余したまま置き去りにされた場所のように思えたのだ。ぼくはさらに古い校内新聞を見つけ、そこに藤棚修理のお礼として、結衣が写真係へ渡した短い一文を見つけた。今はもう紙の色に溶けかけていたけれど、そこには、あの日はまた今度撮ろう、というような、やさしい言葉があった。 けれど、次の記録を読んだ瞬間、ぼくは思わず声を漏らした。写真係の名前が、文集と年度誌で違っていたのだ。どちらも似た字だったが、片方は本人、もう片方は双子の兄の名前だった。真央と顔を見合わせる。結衣を待っていたのは、写真を撮る約束をした相手だけではなかったのかもしれない。校内資料の余白には、もう一つ小さな走り書きが残っていた。あの日、カメラを持っていたのは兄で、代わりに弟が写るはずだった、と。 古い写真の端に残る影は、怪しいものではなく、名前を取り違えたまま残った寂しさだった。ぼくはアルバムをそっと閉じた。けれど胸の奥では、まだ説明のつかない誰かの気配が、静かに息をしている気がしていた。
図書館の心霊写真
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