エラベノベル堂

図書館の心霊写真

全年齢

小説ID: cmnhjqti9001t01mzyazudr6l

7章 / 全10

真央が撮った写真を見た瞬間、ぼくは息を呑んだ。机の上に広げた画面の右端、その暗がりに、あの古いアルバムと同じ細い影が写っていたからだ。しかも一枚だけではない。真央が試しに何度か撮り直した写真のどれにも、端のほうに同じような白い筋や、立っているようで立っていない輪郭が残っている。 「え、これ、私のスマホだよね」 真央の声が少し震えた。ぼくはうなずこうとして、うまくできなかった。ぼくだけのはずだった違和感が、もう教室の中で普通に起きている。机の位置も、影の形も、偶然では済まない。胸の奥が急に冷たくなった。 真央は撮ったばかりの一枚を拡大して、画面をぼくに突きつけた。そこにはぼくの後ろ姿が映っている。けれど、ぼくの肩の少し上に、もう一つ薄い影が重なっていた。人の形に見えるのに、輪郭だけが妙に古い。まるで写真の中でだけ時間がずれているみたいだった。 ぼくは慌ててアルバムを開いた。古い写真の端と、真央の写真の端を見比べる。すると、暗がりの位置までほとんど同じだと気づいた。しかも、真央の写真には、これまでなかったはずの白い文字が小さく浮かんでいる。かすれて読みにくいのに、そこには確かに、また来たね、と見えた。 真央が青ざめた顔で、これ、私たちだけじゃないのかな、と言った。その言葉で、ぼくははっとした。ずっと自分が見つけた写真だけの話だと思っていた。でももし、あの約束の相手を探す気配が、写真を通して誰かに触れていくのだとしたら。ぼくの周りだけじゃなく、もっと広がってしまう。 背後で、図書館の棚が小さく鳴った。振り返ると、誰もいない。なのに、窓際の光が一瞬だけ細く切れ、そこに立つ人の影を作った。けれど次の瞬間には消えていた。真央が私、これ以上はやめよう、と掠れた声で言う。 ぼくはうなずきかけて、画面の中にもう一つ違うものを見つけた。真央の肩越しに、知らない手がそっと伸びている。けれどその手は脅かすためではなく、アルバムをこちらへ返そうとしているみたいだった。ぼくは胸の奥で、恐怖より先に別の予感を覚えた。これは終わりに近づいているのか、それとも、ようやく向こうからこちらへ来たのか。

7章 / 全10

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