初めての発表機会が近づくほど、五人の足並みは逆に乱れていった。会場の小さなステージを想定して組んだ動きは、リハーサル室の狭さのせいもあって妙に窮屈で、入るはずのタイミングが少しずつずれる。ギターの男が音の入りを気にすれば、ドラムの女はその確認を待たずに拍を進め、ベースの青年は言葉少なに土台だけを置く。派手な髪色の女は歌の勢いを優先したいのに、ボーカルの青年が安全にまとめようとして、かえって全体が重たくなる。手応えは薄いまま、練習だけが重なっていった。 焦りがはっきり顔を出したのは、本番形式で通した夜だった。最初の数小節は保てたのに、サビ前で誰かがわずかに遅れ、そこへ別の誰かが合わせようとして、音の輪が一瞬だけ崩れた。止まったのは一瞬だったが、その短さが余計に痛かった。ギターの男が舌打ちし、派手な髪色の女が 「今のは違うでしょ」 と声を上げる。ドラムの女はスティックを置き、ベースの青年は無言でアンプの前に立ったまま動かない。ボーカルの青年が何か言いかけたが、空気の硬さに飲まれて言葉を失った。 その沈黙を破るように、ギターの男が立ち上がった。 「もういい、全部俺が合わせる。今のままじゃ無理だ」 強引な言い方だった。だが彼の中では、遅れたせいで崩れた、足を引っ張った、そんな思いだけが渦を巻いていた。譜面を掴み直し、細部まで指示しようとする彼に、ドラムの女が冷たい声を返す。 「全部じゃない。自分のやり方を押しつけたいだけに見える」 派手な髪色の女も腕を組んだ。 「合わせるって、黙らせることじゃない」 ギターの男は言い返そうとして、何も出てこなかった。自分がまとめれば早いと思っていた。だが、早いだけでは何も残らない。崩れた瞬間に責められるのが怖くて、先に枠を固めようとしていただけだった。ベースの青年が低く息をつく。 「一回、落ち着け。今必要なのは統一じゃなくて、確認だろ」 その言葉に、ボーカルの青年がようやく顔を上げた。 「僕も、止めるのが遅かった。揃える役目を誰か一人に押しつけてた」 ギターの男は、握っていた譜面をゆっくり戻した。しばらくして、短く頭を下げる。 「……悪かった。俺、怖くなると雑になる」 誰もすぐには笑わなかった。けれど、その一言で、空気の角が少しだけ取れた。本番まで時間は少ない。それでも、強引にまとめるより、ばらついたまま一度並べ直すしかない。五人は初めて、誰か一人の正しさではなく、崩れ方まで含めて共有するために椅子を寄せた。
相性最悪、最強の五人
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