エラベノベル堂

相性最悪、最強の五人

全年齢

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8章 / 全10

話し合いのために集まった五人は、最初から机を挟んで険しい顔をしていた。次の練習ではどうするか、ではない。誰が悪かったのか、どこまで譲るのか、その一点だけが部屋の空気を固くしていた。沈黙を破ったのは、派手な髪色の女だった。 「このままじゃ、また同じことの繰り返しでしょ」 言い終える前に、ギターの男が反発した。 「同じじゃない。次は俺が合わせる」 「だから、それが押しつけだって言ってるんだよ」 声が上がると、堰を切ったように言葉がぶつかり合った。ベースの青年は自分の役目は土台だと譲らず、ドラムの女は止める基準を変えないと言い、ボーカルの青年は全員の意見を聞く順番が必要だと主張した。だが、誰も相手の言葉を最後まで受け止めない。正しいことを言っているはずなのに、音も会話も少しずつずれていく。やがて、ギターの男が机を軽く叩いた。 「結局、みんな自分のやり方を守りたいだけじゃないか」 その一言で、全員が黙った。強い言葉だったが、否定しきれなかった。彼は続けた。 「俺は失敗したくない。だから細かく決めたい。お前らは、それを窮屈だと思う。分かってるのに、どっちも引けなかった」 ドラムの女が視線を落とす。 「私も、止めるのが仕事だと思ってた。間違いを見つけるのが正しいって、勝手に決めてた」 ベースの青年は短く息を吐いた。 「俺は黙っていれば揉めないと思ってた。でも、それじゃ伝わらない」 ボーカルの青年も、苦笑いのような顔でうなずいた。 「まとめるつもりで、ただ丸くしたかっただけかもしれない」 派手な髪色の女は腕を組んだまま、しばらく誰も見なかった。やがて、低い声で言う。 「私だけが頑張ってたみたいな顔をしてたけど、違った。みんな、自分が傷つかないようにしてただけなんだ」 その言葉に、空気が少しだけ柔らかくなった。勝ち負けを決める話ではない。誰かを負かしても、曲は進まない。むしろ、自分の正しさを守ろうとするほど、相手の役目が見えなくなる。五人はようやく、その単純なことに気づいた。 じゃあ、どうするのか。答えはすぐには出なかった。だが、前より少し冷静な顔で、彼らは協力の条件を書き直した。細かい指示は最初だけにする。止める前に一拍置く。意見は順番に言う。感情で切らず、確認で返す。誰か一人が背負わない。その代わり、誰も逃げない。 書き終えた紙を見て、ギターの男が小さく笑った。 「こんな地味な決まりで大丈夫か」 「大丈夫じゃないと困るでしょ」 と、ドラムの女が答える。 派手な髪色の女も肩をすくめた。 「少なくとも、今よりはまし」 その夜、五人は解散しなかった。正しさを守るためではなく、正しさだけでは届かない場所へ進むために、もう一度だけ同じ椅子を囲んだ。

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