午後の日差しが強まる中、店には再び客が訪れ始めた。さっきのサラリーマンが去って間もなく、今度は背の高い男が入ってきた。清潔感のあるシャツを着た彼は、一見すると普通の客に見えた。だが、その目はひなたを捉えて離さない。 「いらっしゃいませ」 緊張しながら声をかけると、男は野菜棚の前へ歩み寄った。 「キュウリ、どれがいいかなあ」 独り言のように言いながら、男は何本も手に取っては眺めている。やがて、彼はカウンターの方へ戻ってきた。 「ねえ、お嬢さん。いいキュウリの選び方、知ってる」 ひなたは首を振った。 「いえ、あまり詳しくなくて……」 「教えてあげるよ」 男はそう言うと、カウンター越しにひなたの手を取った。 「まず、皮にハリがあるか確認するの」 彼の指が、ひなたの手の甲を滑る。その指先は冷たく、汗ばんだ肌に触れた瞬間、びくりと身体が震えた。 「それから、まっすぐで、硬さがちょうどいいものを選ぶ」 男はキュウリを手に持ち、わざとらしく上下に動かした。 「太さも重要だよね。こういうの、どう思う」 その動作と言葉の意味に気づき、ひなたの顔が赤らんだ。 「あ、あの……」 「あはは、顔が赤いよ。可愛いね」 男は楽しげに笑いながら、まだひなたの手を離さない。その時、別の客が入ってきた。先ほどの初老の男性だ。 「おや、賑やかだねえ」 彼はそう言いながら、ひなたの白衣の裾をじっと見ている。 「娘さん、汗びっしょりじゃないか。大丈夫かい」 「は、はい。大丈夫です」 初老の男性はカウンターに近づき、野菜を選ぶふりをしながら、ひなたの胸元に視線を這わせた。 「白衣の下、何着てるんだい。黒いのが見えるけど」 「……えっと……」 「見せてよ。暑いだろう」 男性の手が、白衣のボタンに伸びそうになった瞬間、背の高い男が割って入った。 「おじさん、順番待ってよ。俺が先だから」 二人の男の間に張り詰めた空気が流れる。だが、その視線はどちらもひなたを欲望で見つめていた。 「まあいい。また来るよ」 初老の男性は去りがけに、ひなたの腰の曲線を舐めるように見つめていった。 「君、名前は」 「桜羽原、ひなたです」 「ひなたちゃんか。いい名前だ。俺、また来るから」 背の高い男も去っていった。店には重苦しい静寂が戻る。ひなたは震える手で自分の身体を抱きしめた。彼らの視線が、言葉が、身体にへばりついて離れない。店の外では、蝉の声がさらに大きくなっていた。
白衣の収穫
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