エラベノベル堂

封印が解けて精霊に溺れる

18+ NSFW

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4章 / 全10

「今日も来てくれたんだね」 三度目の夜間調査。美咲は頷きながら、レオンの隣に並んだ。地下遺跡の入り口はすでに見慣れたものになっている。 「それより、これ」 美咲は鞄からローターを取り出した。ここ数日、振動は止むどころかさらに激しさを増している。授業中も休み時間も、常にぶるぶると唸り続け、彼女の神経を逆撫でしていた。 「祭壇に近づくと、もっと激しくなるの」 「封印との共鳴だね」 レオンは松明を掲げた。 「深くまで行ってみよう」 二人は通路の奥へと進んだ。前回立ち入らなかった枝分かれした道を抜けると、壁画が描かれた広い空間に出た。壁画には、複数の人影が何かに跪いている様子が描かれている。 「これは……」 「古代の儀式だ」 レオンは壁に手を添えた。 「かつてこの地には、強大な力を持つ存在が封印されていた。人々はそれを『無垢なる災厄』と呼んだ」 「災厄? なら封印されていたのは、悪いものってこと?」 「一概には言えない」 彼は振り返った。 「災厄と呼ばれていても、その本質は必ずしも邪悪とは限らない。古い時代の記録は、しばしば真実を歪めて伝えるからね」 美咲は壁画を見上げた。跪く人々の表情は、恐怖と恍惚が入り混じったような不思議なものだ。 「君の神器は、その封印と繋がっている」 レオンは続けた。 「君の魔力で完全に覚醒させれば、封印を解くことができるかもしれない」 「でも、何のために?」 「真実を知るためだ」 彼は美咲の手を取った。 「君も知りたいだろう。自分がなぜこの世界に召喚されたのか。その神器を手にした意味を」 美咲はローターを見つめた。確かに、ずっと疑問だった。なぜ自分が選ばれたのか。この振動する異物には、何か意味があるはずだ。 「……分かった。もう少し調べてみる」 「ありがとう」 レオンは微笑んだ。 「君は信頼できる協力者だ」 その言葉に、美咲の胸が少しだけ温かくなった。この世界に来てから、彼だけが真正面から向き合ってくれている。 調査を終えて寮に戻る途中、レオンは 「先に行ってくれ」 と言い残して別れた。美咲が角を曲がった瞬間、彼は懐から小さな鏡を取り出した。 「……こちらレオン。対象との信頼関係は構築完了」 鏡の表面が揺らぎ、しわがれた声が応える。 『神器の状態は?』 「覚醒が進んでいます。あと二、三回の儀式で完全な状態になるでしょう」 『良い動きだ。本国も準備を進めている。封印が解かれ次第、我々は侵攻を開始する』 「承知いたしました」 レオンは鏡を懐にしまった。その表情には、美咲に見せていた柔らかな微笑みの欠片もない。 一方、寮に戻った美咲はベッドに横たわりながら、手の中のローターを眺めていた。 「レオンなら、何か分かるはず……」 彼女はそう呟きながら、眠りに落ちていった。まさかその信頼が、やがて裏切られることになるとは知らずに。

4章 / 全10

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