気づくと、私は見知らぬ天井を見上げていた。プールの記憶が霧のように曖昧で、体の中に残る熱だけが現実感を帯びている。 「目が覚めたみたいね」 横から涼やかな声が降ってくる。顔を向けると、黒髪の長い女性が椅子に腰掛け、優雅に足を組んでいた。整いすぎた顔立ちと、どこか人を食ったような笑み。彼女は手に持ったティーカップを口元へ運び、ゆっくりと紅茶を啜る。 「あなたは……」 「隣に住んでるの。覗いてみたら、面白いことになってたから」 彼女は立ち上がり、私の方へ歩み寄ってくる。その瞳の奥には、底知れない深淵が覗いていた。 「驚いたわ。あの衣装を着て、男たちに囲まれて恍惚な顔をするなんて」 「違う……あれは衣装のせいで……」 「知ってる。その服が何なのかも、あなたが誰なのかも」 彼女は私の耳元に唇を寄せ、囁くように告げた。 「あなたは世界を滅ぼす鍵になる存在よ」 その言葉に、背筋が凍る。彼女は私の反応を楽しむように続ける。 「そのゴスロリ衣装は古代の魔術が込められた遺物。着用者の欲望を増幅させ、戦闘力を与える代わりに、周囲の男たちを魅了し、狂わせる効果があるの」 「じゃあ、私があんな目に遭ったのは……」 「衣装の呪いよ。あなた自身の資質も関係しているけれど」 彼女は私の体に残る痕跡に視線を落とす。恥ずかしさで顔が熱くなる。 「でも、まだ間に合うかもしれない。あなたの記憶を取り戻せば、運命も変わるかもしれないから」 「記憶……私の記憶を知っているの?」 彼女は意味深に微笑むだけで、直接的な答えは避けた。 「私は予知能力者。あなたの未来も、過去も、ある程度は見えているわ」 「予知能力……」 「信じるかどうかは自由。でも、私と一緒に来れば、記憶の手掛かりが見つかるはずよ」 彼女は手を差し伸べる。その白い指先を見つめながら、私は迷っていた。見知らぬ女の言葉を信じていいのかどうか分からない。けれど、記憶を失った私には他に頼れるものがなかった。 「あなたの名前は?」 「呼び方は何でもいいわ。隣人さんでしょ、予知能力者さんでも」 私は彼女の手を取ることにした。その瞬間、衣装が再び熱を帯びた気がした。 「一つ忠告しておくわ。その衣装を着ている限り、男たちはあなたを見るだけで欲望を募らせる。気をつけて」 その言葉に、私は不安を覚える。けれど同時に、衣装が纏う魔力が私の中で目を覚まし、熱く脈打っているのを感じていた。
黒衣、堕ちし救世主
18+ NSFW小説ID: cmnolu6oi000601ns1mmjfojz

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